2010年12月27日月曜日

ヘリコプリオン Helicoprion

Helicoprion ヘリコプリオン
ペルム紀~三畳紀前期
アメリカ、オーストラリア、ロシア、日本











渦巻き状の歯しか見つかっておらず、その全体像は今まで数多くの復元が試みられてきた絶滅種のサメです。その復元のバリエーションの多さは、ネット検索して頂ければ一目瞭然。ただ、そのほとんどで渦巻き状の歯が口の先にある、という考えに基づいており、それに伴い、長めの顔のサメとして表現されています。

 おそらく、一番一般的な方向性での復元。
とはいえ、口(というか鼻先)がこの復元のように細長いサメ(物によってはさらに細長く表現されている事もあります)、というのは化石種、現生種のサメを通じて多いとは言えません。そこで、見た目、普通のサメのような顔の復元の可能性がないものか、と調べてみました。















 (イラスト・ヤマモト
 ネコザメ型復元。これは神奈川県立生命の星・地球博物館特別展「ザ・シャーク」で試みられた復元の一つ。従来の復元の先入観を排し、歯の形状、摩耗等を考慮してみたもの。このイラストは小田隆氏による頭部復元画を元に全身を描いて貰いました。ただ、これは私の指示なのですが、今回の記事のイラストは、先の一般的なタイプもこのネコザメ型も現生のサメを元にしており、ぺルム紀のサメの表現としては強引な手法とも思います。
さらに数年前にもヘリコプリオン新復元が発表されていました。>こちら。あの歯は口の奥、喉の部分にあります。結果的に、顔も普通のサメ、な雰囲気になっています。個人的には一般的な、歯は下あごの先、上アゴの鼻先が尖っている復元が好きなので、新復元がより正確、という事になれば、ちょっと残念な気もします。またギンザメに近いとも考えられているため、それを考慮するとまた違った姿を想像する事が出来るかもしれません。とにかく、全身の姿が分る化石が見つかる日が楽しみです。


































  ヘリコプリオンの歯の化石と、復元に関する解説
(福井県立恐竜博物館にて2008年撮影)


追記:2013年にヘリコプリオンはサメよりもギンザメに近いという説が発表されました
参考記事


主な参考資料 
・神奈川県立生命の星・地球博物館特別展「ザ・シャーク」図録
・サイト「東京大学総合研究博物館」
・「古生代の魚類」(J.A.モイートマス、R.S.マイルズ)
・「小学館の図鑑NEO 大むかしの生物」(監修・日本古生物学会)


(イラスト・ヤマモト  文・ふらぎ)

恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2010年12月8日水曜日

タニストロフェウス Tanystropheus





イラスト・ヤマモト
ヤマモト生物模型))


Tanystropheus
longobardicus
三畳紀中期~後期
イタリア ドイツ

一見、プレシオサウルスやエラスモサウルスのような首長竜の仲間に見えますが、プロラケルタ類に属しプレシオサウルス類とは系統的に近縁ではありません。全長の半分以上が首というプロポーションですが、首の骨の数は10個しかなく、それほどの柔軟性は無かったと考えられます。以前は海辺の岩場から、首を釣竿のように伸ばし、海中の魚等を捕らえる姿が描かれていましたが、近年では水中生活者として後脚や尻尾を推進力に泳ぎ、イカや魚を追っていたとも考えられているようです。今回の全身も水中を泳いでいる姿でヤマモトさんに描いて貰いました。
















(イラスト・ふらぎ)

"Tanystropheus longobardicus (Reptilia, Protorosauria): re-interpretations of the anatomy based on new specimens from the Middle Triassic of Besano (Lombardy, Northern Italy)"
Nosotti, Stefania, 2007,
に掲載されていた詳細な頭骨復元図を元に描いた頭部です。
もっとトカゲっぽい顔かと思っていたのですが、骨格図を見ると結構個性的な顔で驚きました。また、口の前方と後方で歯の形状が違うのも面白いのです。前方は首長竜のような細長い歯ですが、後方は長さは前方の歯ほどなく、咬頭が3つある、真ん中が大きいアディダスのマークのような形状です。
このイラストでは、上下の歯が綺麗に交差する前方の歯は閉口時でも露出し、後方の歯は現生のトカゲと同じような閉口時には唇で隠れ露出しない表現にしました。

主な参考資料
・"Tanystropheus longobardicus (Reptilia, Protorosauria): re-interpretations of the anatomy based on new specimens from the Middle Triassic of Besano (Lombardy, Northern Italy)"
Nosotti, Stefania, 2007,
・"A NEW SPECIMEN OF TANYSTROPHEUS (REPTILIA PROTOROSAURIA) FROM THE. MIDDLE TRIASSIC OF SWITZERLAND AND THE ECOLOGY OF THE GENUS." SILVIO RENESTO.
・「Dinosaurs of Italy」Cristiano Dal Sasso
・「恐竜大図鑑」デーヴィッド・ランバート、その他

(文:ふらぎ、イラスト:ヤマモト・ふらぎ)

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