Aetiocetus polydentatus
漸新世・東アジア
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ヒゲクジラ的な頭蓋と立派な歯列を持つ「歯のあるヒゲクジラ」、Aetiocetus属の一種です。
このpolydentatus種は特に歯の数が多く、カズハヒゲクジラという和名を付けられています(カズハ=「数歯」)。
北アメリカで発見されたAetiocetus weltoni種の保存状態の良い頭骨化石には、歯列の内側の広い範囲にわたって、現生のヒゲクジラの頭蓋に見られるのと同じ様な特徴(ヒゲに養分を送る為の血管や神経の通る孔)がある事が分かっています。
polydentatus種ではその特徴は確認されてはいないものの、同属という事で上顎歯列の内側にヒゲを描きました。
北海道の足寄化石動物博物館には、歯のあるヒゲクジラでは唯一の全身復元骨格が展示してあります。
イラストは復元された頭骨の図を基に描いています。
現生のハクジラは上顎の唇が厚く、歯が隠れてしまっている種類が多いので、このイラストではヒゲと歯が見える様に上顎の唇が薄く、口を閉じた時に発達した下顎の唇がその上に被さるヒゲクジラタイプの顔にしました。復元と言うには少しやりすぎな感がありますが、実際の所はどんな口だったのでしょう。
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参考にした資料
・"Morphological and Molecular Evidence for a Stepwise Evolutionary Transition from Teethto Baleen in Mysticete Whales"
Thomas A. Demere, Michael R. McGowen, Annalisa Berta, John Gatesy
(Systematic Biology 01 February 2008)
・"Fossil Cetacea (whales) in theOregon Western Cascades"
William N. Orr, Paul R. Miller
(Oregon Geology Vol. 45, Number 9, 1983)
・「クジラヒゲの出現‐解剖から化石へ」
澤村 寛
(勇魚49号, 2008)
・足寄化石動物博物館公式サイト
(イラスト・文 meribenni)