2010年4月18日日曜日

ニホングリソン (オリエンシクティス) Oriensictis nipponica

Oriensictis nipponica
更新世中期・東アジア(日本)
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 北九州市門司の松ヶ枝洞窟で発見された食肉目・イタチ科の仲間で、現生種では中南米にのみ生息するとされるグリソン類の新属新種です。
イラストは、本種の研究者である荻野慎太郎博士に監修して頂いたものを、本ブログ用に描き直しました。

 荻野博士とのやり取りを簡単にまとめてみます。
ニホングリソンの化石は上顎と下顎の歯列の一部が発見されているだけなので、荻野博士から頂いた論文と、現生のグリソンの頭骨画像を基に頭骨の復元図を描く事にしました。
 ニホングリソンは吻部が現生や他の化石種のグリソンに比べて短く、上顎犬歯に溝があるのが特徴だそうです。それを基にラフを描き、荻野博士に見て頂きます。


 上が現生種、下がニホングリソンです。よく分からないまま描いていたので、今見ると現生種のイラストも歯はおかしいのですが、ツッコミは下のニホングリソンのみで。

1)ニホングリソンの下顎p4は単一咬頭。
2)上顎犬歯の溝は下顎犬歯の突出部と対応関係にあるので、口を閉じた状態では全く見えない。
3)上顎m1は下顎m1m2の間くらいに被さる様な対応関係。下顎歯列が少し長いかなぁ。
あとは、歯の上下の対応は互い違いなのでその辺りに気を付けてみて下さい、との事でした。

 手直ししたラフを見て頂き、概ね良しとされました。
追加のアドバイスとして、
1)ニホングリソンは肉食傾向が強く、そういった種の犬歯歯根は鼻腔の上の方まで達しているので、その質感が出せると良い。
2)肉食傾向が強いので側頭筋が発達していたはず、恐らく脳頭蓋の天辺に矢状稜があると良い。
3)普通の食肉目(グリソン含む)の下顎犬歯は、獲物に引っ掛けて逃がさない様に機能する為フック状に曲がっていて、上顎犬歯は割合真っ直ぐ。しかし、ニホングリソンの下顎犬歯は上顎犬歯の溝とのハサミ的な役割を備えているので、普通のグリソンほどフックがきつくない。

 そのアドバイスを意識しつつイラストを完成させました。
今回の鉛筆描きのイラストを描き終わってから、後頭部が短いかも?と思い、お訊きしてみた所やっぱり少し短いそうです。
 実際に研究者の方に見て頂きながら古生物を描いたのは初めてでしたが、自分では分かっていたつもりの事でも、実は全然理解出来ていなかったり、何が分かっていないのかも分かっていない状態だったんだなぁと深く感じました。また、一見それらしく描く事は出来るかも知れませんが、研究者の方無しにはしっかりとした復元画を描く事は出来ないという事も改めて理解させられました。
 最後に、素人の私にもとても分かりやすい言葉や表現でアドバイスして下さった荻野慎太郎博士に、この場を借りて感謝申し上げます。有り難う御座居ました。
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参考にした資料
・"New middle Pleistocene Galictini (Mustelidae, Carnivora) from the Matsugae cave deposits, northern Kyushu, West Japan"(Paleontlogical Research, Vol. 12, June 30, 2008)
Shintaro Ogino, Hiroyuki Otsuka
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(イラスト・文 meribenni)