2011年1月28日金曜日

プテラノドン? ゲオステルンベルギア?















Geosternbergia sternbergi (Pteranodon sternbergi)
ゲオステルンベルギア ステルンベルギ
(プテラノドン ステルンベルギ)
白亜紀後期
北米
翼開長 9m


プテラノドンと言えば、翼竜を代表する、一般的には翼竜=プテラノドン、とイメージされているかもしれない有名な古生物です。プテラノドン属の中には多くの種類が提唱されて来ましたが、それがおおよそプテラノドン・インゲンスとプテラノドン・ステルンベルギの2種に纏まり、またさらにインゲンスはプテラノドン・ロンギセプスと種小名が変更になりました。個人的にはずっとインゲンスの種小名で馴染んで来ていたので、ロンギセプスへの変更を知った時は驚いたものです。
ロンギセプスとステルンベルギの外見上の一番の違いはトサカの形状でしょう。一般的にプテラノドンとしてイメージされるのはロンギセプスのはず。また、ここにトサカの雌雄差での形状の違いも入ってくるようです。
さらに最近、ステルンベルギに関しては、そもそもプテラノドン属では無い、という説が発表されました。この説ではステルンベルギは種小名はそのままに、属はゲオステルンベルギアに変更されてます。その説に従えば、プテラノドンといえば、まさのあのトサカのロンギセプスのみ、という事に。ただし、プテラノドンもゲオステルンベルギアもプテラノドン科になるので、属としては違う動物になってはいるものの、近縁種である事は変わりありません。

上・プテラノドン・ロンギセプス
下・ゲオステルンベルギア・ステルンベルギ
(プテラノドン・ステルンベルギ)

今回のイラストはヤマモトさんに描いて貰いました。翼竜の復元も各部に諸説があり、特に皮膜の形は学説や翼竜の種類によっても違いがあります。また、頭の角度は、この研究を参考に少し嘴を下げ気味の角度に。ただし、この研究はアンハングエラについてのものですので、それがそのままプテラノドン類に当て嵌まるかは未確認。足の向きは足の裏が内側を向く、「前へ倣え」状態にで描いて貰いました。

ちなみに、現段階でプテ ラノドン、ゲオステルンベルギアが発見されているのは、白亜紀後期でも約8300万年から約7000万年前の地層からです。ティラノサウルスやトリケラト プスが現れるのはその後ですから、その2頭の背景にプテラノドンが飛んでいる、というのは現段階では間違いという事になります。


主な参考資料
・「世界最大の翼竜展」公式カタログ
・「翼竜」(ペーター・ヴェルンホファー 平凡社)
・Alexander W.A. Kellner "Comments on the Pteranodontidae (Pterosauria, Pterodactyloidea) with the description of two new species"
・Elgin, R.A., Hone, D.W.E and Frey, E. 201X. "The extent of the pterosaur flight membrane." Acta Palaeontologica Polonica 5X(X): xxx-xxx. doi:
10.4202/app.2009.0145



(文・ふらぎ/イラスト・ヤマモト

恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

 

2011年1月11日火曜日

プロトサウルス Plotosaurus











Plotosaurus
アメリカ・カルフォルニア州
全長 約9m
白亜紀後期


"A fishy mosasaur: the axial skeleton of Plotosaurus(Reptilia, Squamata) reassessed."Lindgren, J., Jagt, J.W.M. & Caldwell, M.W. 2007:  の骨格図を基に描いています。基にした骨格図では、尻尾の先が下方に曲がっており、魚竜やサメのような尾ヒレを持っていた可能性が示唆されています。このモササウルス類の尾ヒレの存在は、その後に発表された"Convergent Evolution in Aquatic Tetrapods: Insights from an Exceptional Fossil Mosasaur"Johan Lindgren, Michael W. Caldwell, Takuya Konishi, Luis M. Chiappe においてさらにはっきりと表現されています。ただし、どちらの論文においても、尾ヒレの上側の部分は痕跡が残っていないため、あくまで推測として形が示されています。
また、尾ヒレの曲がる角度も、後者の論文において紹介されているプラテカルプスの標本ではもっと大きく下方に曲がっているため、モササウルス類の中でも最も進化型と考えられているプロトサウルスでも同じような尾ヒレの角度になっていた可能性も考えましたが、今回はあくまで論文に掲載の骨格図に準じました。

プロトサウルスは、モササウルス類としては細長い口と、幅が狭く長さのあるオール型の前後ヒレも特徴で(クリダステスやプラテカルプスの前後ヒレは卓球のラケット型。ティロサウルスはプロトサウルスに似たオール型です)、その姿はモササウルス類というよりも、原始的な魚竜であるウタツサウルスを連想させます。今回のイラストの基になった論文のタイトルにも”A fishy mosasaur”とあるくらいですから、モササウルスとしては異質なデザインと言って良いかも知れません。モササウルス類は出現から白亜紀末の絶滅までは3000万年と、他の中生代の海棲爬虫類と比べても短い期間の繁栄でした。魚竜が2億5千万年前に現れ9000万年前に姿を消すまで1億6千万年間存在していた事、その魚竜と入れ替わるようにモササウルス類が現れた事から、もし白亜紀末のモササウルス類の絶滅が無ければ、魚竜と同じような姿に進化していたのか、それともまた違った進化の姿を見せていたのか、等といろいろ想像してしまいます。

プロトサウルス全身骨格
(2013年 ロサンゼルス郡立自然史博物館にて撮影)


:
主な参考資料

・A fishy mosasaur: the axial skeleton of Plotosaurus(Reptilia, Squamata) reassessed."
Lindgren, J., Jagt, J.W.M. & Caldwell, M.W. 2007

・"Convergent Evolution in Aquatic Tetrapods: Insights from an Exceptional Fossil Mosasaur"
Johan Lindgren, Michael W. Caldwell, Takuya Konishi, Luis M. Chiappe 

・「恐竜解剖」(クリストファー・マクガワン)

・きしわだ自然資料館特別展「モササウルス」

(イラスト・文 ふらぎ
恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)