2010年12月27日月曜日

ヘリコプリオン Helicoprion

Helicoprion ヘリコプリオン
ペルム紀~三畳紀前期
アメリカ、オーストラリア、ロシア、日本











渦巻き状の歯しか見つかっておらず、その全体像は今まで数多くの復元が試みられてきた絶滅種のサメです。その復元のバリエーションの多さは、ネット検索して頂ければ一目瞭然。ただ、そのほとんどで渦巻き状の歯が口の先にある、という考えに基づいており、それに伴い、長めの顔のサメとして表現されています。

 おそらく、一番一般的な方向性での復元。
とはいえ、口(というか鼻先)がこの復元のように細長いサメ(物によってはさらに細長く表現されている事もあります)、というのは化石種、現生種のサメを通じて多いとは言えません。そこで、見た目、普通のサメのような顔の復元の可能性がないものか、と調べてみました。















 (イラスト・ヤマモト
 ネコザメ型復元。これは神奈川県立生命の星・地球博物館特別展「ザ・シャーク」で試みられた復元の一つ。従来の復元の先入観を排し、歯の形状、摩耗等を考慮してみたもの。このイラストは小田隆氏による頭部復元画を元に全身を描いて貰いました。ただ、これは私の指示なのですが、今回の記事のイラストは、先の一般的なタイプもこのネコザメ型も現生のサメを元にしており、ぺルム紀のサメの表現としては強引な手法とも思います。
さらに数年前にもヘリコプリオン新復元が発表されていました。>こちら。あの歯は口の奥、喉の部分にあります。結果的に、顔も普通のサメ、な雰囲気になっています。個人的には一般的な、歯は下あごの先、上アゴの鼻先が尖っている復元が好きなので、新復元がより正確、という事になれば、ちょっと残念な気もします。またギンザメに近いとも考えられているため、それを考慮するとまた違った姿を想像する事が出来るかもしれません。とにかく、全身の姿が分る化石が見つかる日が楽しみです。


































  ヘリコプリオンの歯の化石と、復元に関する解説
(福井県立恐竜博物館にて2008年撮影)


追記:2013年にヘリコプリオンはサメよりもギンザメに近いという説が発表されました
参考記事


主な参考資料 
・神奈川県立生命の星・地球博物館特別展「ザ・シャーク」図録
・サイト「東京大学総合研究博物館」
・「古生代の魚類」(J.A.モイートマス、R.S.マイルズ)
・「小学館の図鑑NEO 大むかしの生物」(監修・日本古生物学会)


(イラスト・ヤマモト  文・ふらぎ)

恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2010年12月8日水曜日

タニストロフェウス Tanystropheus





イラスト・ヤマモト
ヤマモト生物模型))


Tanystropheus
longobardicus
三畳紀中期~後期
イタリア ドイツ

一見、プレシオサウルスやエラスモサウルスのような首長竜の仲間に見えますが、プロラケルタ類に属しプレシオサウルス類とは系統的に近縁ではありません。全長の半分以上が首というプロポーションですが、首の骨の数は10個しかなく、それほどの柔軟性は無かったと考えられます。以前は海辺の岩場から、首を釣竿のように伸ばし、海中の魚等を捕らえる姿が描かれていましたが、近年では水中生活者として後脚や尻尾を推進力に泳ぎ、イカや魚を追っていたとも考えられているようです。今回の全身も水中を泳いでいる姿でヤマモトさんに描いて貰いました。
















(イラスト・ふらぎ)

"Tanystropheus longobardicus (Reptilia, Protorosauria): re-interpretations of the anatomy based on new specimens from the Middle Triassic of Besano (Lombardy, Northern Italy)"
Nosotti, Stefania, 2007,
に掲載されていた詳細な頭骨復元図を元に描いた頭部です。
もっとトカゲっぽい顔かと思っていたのですが、骨格図を見ると結構個性的な顔で驚きました。また、口の前方と後方で歯の形状が違うのも面白いのです。前方は首長竜のような細長い歯ですが、後方は長さは前方の歯ほどなく、咬頭が3つある、真ん中が大きいアディダスのマークのような形状です。
このイラストでは、上下の歯が綺麗に交差する前方の歯は閉口時でも露出し、後方の歯は現生のトカゲと同じような閉口時には唇で隠れ露出しない表現にしました。

主な参考資料
・"Tanystropheus longobardicus (Reptilia, Protorosauria): re-interpretations of the anatomy based on new specimens from the Middle Triassic of Besano (Lombardy, Northern Italy)"
Nosotti, Stefania, 2007,
・"A NEW SPECIMEN OF TANYSTROPHEUS (REPTILIA PROTOROSAURIA) FROM THE. MIDDLE TRIASSIC OF SWITZERLAND AND THE ECOLOGY OF THE GENUS." SILVIO RENESTO.
・「Dinosaurs of Italy」Cristiano Dal Sasso
・「恐竜大図鑑」デーヴィッド・ランバート、その他

(文:ふらぎ、イラスト:ヤマモト・ふらぎ)

恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)
恐竜 古生物 古代生物 絶滅 動物 復元 イラスト)

2010年10月17日日曜日

キロテリウム Chilotherium pugnator

Chilotherium pugnator
キロテリウム・プグナトル
日本
中新世

:
 キロテリウム属はサイの仲間ですが、現生のサイの様な角は無く、下顎の切歯が2本大きく前に突き出していました。
今回描いたのは、岐阜県可児市で発見されたpugnator種(カニサイ)です。
と言っても、可児の化石は下顎メインだったりするので、主に同属のanderssoniの復元全身骨格を基に、また、現生のシロサイの写真を参考に描いています。
 頭骨は、上顎に比べ下顎がかなり長く、生存時は物凄く受け口だったのでは、という感じに見えます。しかし、現生のサイも含め大抵の哺乳類は、頬や唇などとても多くの軟組織が顔に付くので、生きている状態だけを見ると頭骨の形はかなり分かりにくいです。骨だけだと印象深い部位も、生体を見ると肉に隠れてほとんど分からなかったりもします。
そんな訳で、下顎も極端に受け口にはせず、切歯が唇からはみ出る程度の顔付きに描きました。
 描き終えて見直すと、首の盛り上がった肉は少しやりすぎたかな、と思いました。キロテリウムの胸椎の棘突起はシロサイの棘突起程には発達していない様なので、シロサイより控えめに描いた方がよりらしく見えたかも知れません。
 この絵は、岐阜県瑞浪市の瑞浪市化石博物館で開催されている第74回特別展・「よみがえる日本の哺乳類たち」の会場に、カニサイの化石と共に展示されています。今日10月17日から12月26日までですので、お近くにお住まいの方は是非ご来場下さい。
:
主に参考にした資料
Jordi Aqusti, Mauricio Anton
・"East African Mammals ⅢB" Jonathan Kingdon
(イラスト・文 meribenni)

2010年9月28日火曜日

ステゴケラス Stegoceras validum






Stegoceras validum
 ステゴケラス・バリドゥム
 北米
白亜紀後期
 :
 パキケファロサウルスに代表される、堅頭竜・石頭竜と言われる事もあるパキケファロサウルス類の1種。全長は2m程度。
 今回のイラストは、御所浦白亜紀資料館に展示されている全身骨格レプリカを基に描いています。ステゴケラスの全身骨格の展示は国内では珍しいと思われます。展示のすぐ側にまで近づいて見る事が出来たり、同資料館にあるパキケファロサウルスの頭骨レプリカと見比べられるのも嬉しいです。

















御所浦白亜紀資料館のステゴケラス

 ステゴケラスはパキケファロサウルス類の中では、胴体部も発見されている数少ない恐竜だそうです。今回のイラストを描く際にもプロポーションは展示骨格そのままにしています。ただ、これだけの大きさの頭を支えるには、展示骨格の首は細長過ぎるような気もします。他の全身骨格や骨格図等には、首の骨をもっと太く、しっかりとしたものとして復元されているものもあるので、今回のイラストでも首は太めにしています。また、左右の肩幅をより狭く修正、シッポも展示骨格のように柔軟に曲がらないのでは、と考え、真っ直ぐに延ばした状態にしました。背中の装甲は、化石証拠は見つかっていないと思われるので、あくまで想像です。
 パキケファロサウルス類の中では、ホマロケファレにおいて頭部以外の保存の良い胴体部が見つかっているそうです。逆に、パキケファロサウルス類の多くが頭骨しか見つかっていないという事でもあります。ホマロケファレは国内では神流町恐竜センターに展示がありますので、パキケファロサウルス類好きの方は是非(私は、まだ見た事が無いのですが)。この仲間ではドラコレックススティギモロクがパキケファロの子供もしくは亜成体、という説が有名ですが、ホマロケファレプレノケファレの子供もしくは亜成体、という説も出ているようです。

















パキケファロサウルス(国立科学博物館)



主に参考にした資料
・「The Dinosauria」(University of California Press)
・「恐竜大図鑑」(ネコパブリッシング)
・サイト「恐竜パンテオン」内、神流町恐竜センター紹介記事

(イラスト・文 ふらぎ

2010年8月31日火曜日

ゴンフォテリウム Gomphotherium annectens

 岐阜県瑞浪市にある瑞浪市化石博物館で、2010年10月17日~12月26日の期間、第74回特別展「よみがえる日本の哺乳類たち」が開催されます。
その特別展に向けて、瑞浪市周辺で化石が発見された絶滅哺乳類の復元イラストの制作依頼を受けました。
そのうちの一つが、このGomphotherium annectensです。これ以外にも、数種類の絶滅哺乳類のカラーイラストを制作中です。
特別展で展示されるので、お近くにお住まいの方は是非見にいらして下さい。
:
(イラスト・文 meribenni)

2010年8月16日月曜日

ペンタケラトプス Pentaceratops

*今回の記事はゲスト投稿として、
ヤマモト生物模型作業週報」の記事より再編集したものです。













Pentaceratops sternbergii

白亜紀後期 北米
:            
 前回Pachyrhinosaurusの製作時に、英語のサイトでの論文購入に初めて挑戦したわけですが、今回はPentaceratopsに関する論文 を2本ダウンロードしてみました。その内1本はPDFファイルを保存する前に閉じちゃって、そのあとどうしてもPDFで開けなくてえらいあせりました。お金出 して買ったのに保存できるチャンス一度だけ!?まさか誤って閉じたら、もう一回買えと!?みたいな感じで。最終的にはできたんですが、英語のサイト緊張す る…。















 
 ダウンロードした論文には、”OMNH 10165”という番号を振られた大型の個体(愛称あるのかな?)の各部位の骨や全身の骨格図もあり、役立ちそうです。ただ全 身の骨格図は胴体の長さがいやにつまっているように見えました。肩甲骨の上の先と腸骨との距離とか肘と膝の間の距離とか、結構せまくて窮屈な印象でした。 そこで胴の長さはG・ポールの骨格図集を参考にちょっと伸ばしました。でも胴全体の傾きというか後肢の伸ばした感じは論文の骨格図で。と、いろいろ混ぜて 骨格図を描いてみました。まあ、数枚の図を見ただけで、一個一個の骨を子細に眺めたわけではないから「骨格図を描いた」はちょっとちがうか。
 ちなみに上からの図はG・ポールの「恐竜骨格図集」のカスモサウルス Chasmosaurus のページを参考にした想像図です。肋骨の幅、腸骨の幅などちょっと心配…。


主に参考にした資料
・"A Gigantic Skull and Skeleton of the Horned Dinosaur
 Pentaceratops sternbergi from New Mexico" Thomas M. Lehman
・"New Data on the Ceratopsian Dinosaur
 Pentaceratops sternbergii Osborn from New Mexico" Thomas M. Lehman
・「恐竜骨格図集」 グレゴリー・ポール(学研)
(文・イラスト ヤマモト

2010年7月30日金曜日

トリケラトプス(番外編)

ちょっとイラストのほうに手が回っておりませんので、
その穴埋めに、、、















造形作品の新作・トリケラトプスの記事
私のブログに更新しましたので、宜しくです。

2010年6月28日月曜日

カルカロドントサウルス Carcharodontosaurus



Carcharodontosaurus saharicus
白亜紀後期 アフリカ

2010年大阪で開催の大恐竜展で展示されていた
頭骨をトレースして描いています。



















カルカロドントサウルスといえば、これまで恐竜博等でも
展示され、また国立科学博物館で常設展示されている
頭骨が一般的なイメージかと思います>頭骨画像
今回イラストの基にした頭骨とは随分雰囲気が違います
(カルカロドントにはsaharicusとiguidensisの2種が
報告されていますが、頭骨は2つ共にsaharicusという事です)。
カルカロドントとしてだけでなく、同じカルカロドントサウルス科である
ギガノトサウルス、マプサウルスの復元頭骨と比べても、
ちょっと異質な感じがします。
キャプションによれば、こちらの頭骨は一部実物の化石も
使われているという事。確かに表面の複雑なライン等、他の頭骨に
比べると説得力があるような。
という事で、この頭骨を基にイラストを描いてみたのですが、、、
意外に結構普通のカルカロドントサウルス科の顔。
頭骨のゴツゴツ感に惑わされていたかも。

ギガノトサウルス、マプサウルスは全身骨格が復元されている訳ですが、
カルカロドントは頭部のみです。胴体もそこそこ発見されているようですし、
ギガノトやマプも参考に、より精度の高い大型のカルカロドントサウルス科の
復元骨格も見てみたいです。
もちろん、より保存状態の良い化石が見つかるに越したことは無いのですが。



主に参考にした資料
・「大恐竜展・失われた大陸ゴンドワナの支配者(1998年開催)」公式カタログ
・「The Age of Dinosaurs in South America 」Fernando E. Novas
・"New specimen of Giganotosaurus carolinii (Coria & Salgado, 1995), supports it as the largest theropod ever found." Calvo, J.O. and Coria, R.A. (1998)
「Project Exploration」
「肉食の系譜」
また、大恐竜展を一緒に見学したLOKI:さんとの
ディスカッションも非常に参考になりました。
(イラスト・文 ふらぎ)

2010年6月27日日曜日

ニホンハナガメ (オカディア・ニッポニカ) Ocadia nipponica

Ocadia nipponica 
更新世中期・日本
:
 千葉県袖ヶ浦市の清川層から発見されたハナガメ属の一種です。
この時発見された化石は、背甲と腹甲の大部分と頭骨、頚椎、左の前後肢などが保存されていました。
 現生種のハナガメ(Ocadia sinensis)は中国南部~ベトナム北部、台湾等の亜熱帯地域に生息しています。
現生種との違いとして甲羅の形状の他、ニホンハナガメは背甲に年輪がほとんど見られない、口の咬合面が大きい等が挙げられます。
 イラストは、本種の記載論文に載せられた背甲の復元図と、私の実家で飼っている現生種のハナガメを基に描きました。首や前肢には現生種と同じ模様を描いています。
背甲の真ん中のキールは少し強調しすぎたかも知れません。あと、成体のハナガメにしては頭が大きいかな、という気がします。
:
参考にした資料
 平山 廉
・読みもの ナウマンゾウがいた! (神奈川県立生命の星・地球博物館)
 樽 創
・"Ocadia nipponica, a new species of aquatic turtle (Testudines: Testudinoidea: Geoemydidae) from the Middle Pleistocene of Chiba Prefecture, central Japan"
(the Paleontological Research, vol. 11, April 30, 2007)
Ren Hirayama, Naotomo Kaneko, Hiroko Okazaki
(イラスト・文 meribenni)
 

2010年6月17日木曜日

ディアブロケラトプス Diabloceratops eatoni

Diabloceratops eatoni
白亜紀後期(カンパニア期)・北米
:
 アメリカ合衆国ユタ州で発見された、セントロサウルス亜科に属する角竜です。模式標本の頭骨の左半分は大変保存状態が良く、骨に見られる特徴から大人の個体とされています。
フリルの上に大きく目立つ角から、スペイン語で悪魔を意味する"diablo"を冠した名前を付けられました。
 イラストは、Diabloceratopsの記載論文に載せられた頭骨の写真を基に描きました。
角竜の絵を初めて描いたのですが、資料にした頭骨の写真を見て、顔、特に目から先の吻の横幅がとても狭かったのが印象的でした。そういう雰囲気が出せれば良いなと思いながら描いています。
鼻孔の位置が全然分からなかったのでこんな所に描いていますが、どうなんでしょう。
化石で残っている角はもう少し短いのですが、イラストでは角やくちばしなどの角質の部分は長くしました。
角竜の口がどれだけ裂けているか、頬の有無など全く分からない事も多くて、やっぱり恐竜は哺乳類とは違う難しさがあるなあと再認識させられました。
 佐賀県立・宇宙科学館にて7月17日~9月12日まで開催される「恐竜展~トリケラトプスの世界~」で、このDiabloceratopsの復元された頭骨が展示されます。
日本では初公開だそうなので、夏に佐賀近辺に行かれる方は観に行ってみては如何でしょうか?
:
参考にした資料
・"New basal Centrosaurinae Ceratopsian skulls from the Wahweap formation (middle Campanian), Grand Staircase - Escalante National Monument, southern Utah"
(New Perspectives on Horned Dinosaurs: The Royal Tyrell MuseumCeratopsian Symposium, Bloomington, Indiana University Press, p. 117 – 140.)
James I. Kirkland, Donald D. De Blieux
:
(文・イラスト meribenni)

2010年5月28日金曜日

カンディアケルヴス Candiacervus sp.

Candiacervus sp.
更新世~完新世・クレタ島
:
 クレタ島で発見された固有のシカ・Candiacervus属です。これまでに数種類が知られています。
クレタ島には大型の捕食者がいなかったので、素早く逃げる必要が無い為にこのシカの脚は短くなりました。
安定性が増した体は、山地の環境で生活するのに有利だった様です。
 Candiacervus属最小のropalophorus種以外の種は、気候が温暖化した際に海水面の上昇などによる生息環境の変化を受けて絶滅していったとされます。しかし生き延びたropalophorus種も、恐らくヒトとの接触により絶滅した様です。
 今回のイラストは、ギリシャのMuseum of Palaeontology and Geology of University of Athensに展示する為に作られた復元骨格を基に描きました。
この復元された骨格はCandiacervus属の二番目に小さな種類で、同じ場所・地層で発見された複数のオスの骨と、三種類ある角のタイプの内一つを組み合わせて作られたそうです。
描いた後で、膝を伸ばしすぎたせいで腰が少し高くなっているのがおかしいなと気付きました。また、少し資料を探していたら、このシカの角は先の方が薄く平たかったらしい事が書いてあり、この絵はそこを間違えているのが一番問題かな、という感じです。
:
参考にした資料
・"The mounting of a skelton of the fossil species Candiacervus sp. Ⅱ from Liko Cave, Crete, Greece"
(Insular Vertebrate Evolution vol. 12, p.337~346, 2005)
Alexandra Van Der Geer, John De Vos, George Lyras & Michael Dermitzakis
・"Relative growth of the Metapodals in a Juvenile island deer:Candiacervus (Mammalia, Cervidae) from the Pleistocene of Crete"
(Hellenic Journal of Geosciences, vol. 41, p.119-125)
Alexandra Van Der Geer, Michael Dermitzakis & John De Vos
・"Pleistocene Deer Fauna in Crete: Its Adaptive Radiation and Extinction"
John De Vos
(日本熱帯生態学会誌 vo.1, 2000, p.125~134)
(文・イラスト meribenni)
 

2010年5月18日火曜日

デスモスチルス Desmostylus sp.

Desmostylus sp.
中新世・北太平洋沿岸
:
 日本を代表する絶滅哺乳類で、現生に子孫を残さず絶えた束柱目に属します。円柱を数本束ねた様な形の非常に特徴的な臼歯を持ち、それが束柱目という名前の由来になっています。

 犬塚則久博士による復元骨格を基にした図(上)と、ドムニング博士による復元骨格を基にした図(下)の2点を描きました。
 犬塚復元は、四肢が体幹から横に張り出した側方型の体型なのに対し、ドムニング復元は四肢が体の下に伸びる下方型の体型に復元されています。
ドムニング復元のイラストを見た知人に指摘された事の中で、「図のように肘を張り出させない状態にすると、指先が外側を向く」というのが面白いなと感じました。

 デスモスチルスの復元といえばすぐに犬塚復元を思い浮かべますが、一般的な哺乳類然とした雰囲気のドムニング復元骨格も一度は見てみたいです。日本には無い様なのでなかなか難しいかもしれませんが。
:
参考にした資料
・「絶減哺乳類デスモスチルスの復元」(バイオメカニズム 9, 1988)犬塚則久
・「デスモスチルスの復元 その後」(地質ニュース 421, 1989)犬塚則久
・「絶滅した日本の巨獣」(築地書館, 1989)井尻正二、犬塚則久
・「生体力学モデルと機械モデルによる絶滅哺乳類デスモスチルスの歩行復元」(バイオメカニズム 15, 1999)山崎信寿, 梅田昌弘, 池内康
:
(イラスト・文 meribenni)

2010年5月17日月曜日

マストドンサウルス Mastodonsaurus

マストドンサウルス
Mastodonsaurus
三畳紀前期~後期
全長 最大6m



大型の絶滅両生類です。
以前は頭が全身の1/3を占めるような特異なプロポーションで復元されていましたが、現在では、その後に発見された標本等を元に、それほど頭の比率は大きく無かったとされています。上顎の先に開いている穴のうち、前の2つは閉口時に下顎の先端近くの牙が収まっていた、と考えられています。

化石両生類は、現生の両生類を参考に比較的凹凸の無い、滑らかな皮膚で表現される事が多いのですが、マストドンサウルスを含む分椎類の仲間には背中に装甲板のような皮骨が発見されているものもあり、また系統的には現生の両生類ともそれほど近いわけでも無い事を考慮すると、ゴツゴツとした体表だった可能性も考えられるのでは、と思い、今回のイラストもそのように表現してみました。また前後肢の爪は無い表現にしています。
分椎類の上顎表面にははっきりとした溝が認められる事があり、これは何らかの機能を持っていたと思われます。分椎の復元の際には、この溝をどう捉え表現するかもポイントの一つになるかと。

「古脊椎動物図鑑」のマストドンサウルスの項には、「日本にこの類の化石がまだ発見されていないのはさびしい」という著者・鹿間時夫氏のコメントがありますが、その約30年後には日本でも化石が発見されました。なんだか、ちょっと良い話です。

参考資料
・"REVISION OF THE TYPE MATERIAL AND NOMENCLATURE OF MASTODONSAURUS GIGANTEUS (JAEGER) (TEMNOSPONDYLI) FROM THE MIDDLE TRIASSIC OF GERMANY"MARKUS MOSER and RAINER SCHOCH
「The RISE of AMPHIBIANS」
「古脊椎動物図鑑」
「両生類の進化」
「ドラえもんのびっくり古代モンスター」
ドラえもん関連書という事で児童書として扱われる事が多いですが、
古生物本としては非常に情報量の多い内容になっています。

Tyler Keillor "Saharastega moradiensis"

追記(2011年9月11日)
日本で最初に発見された分椎類の論文が発表されました。
"The first temnospondyl amphibian from Japan"
Yasuhisa Nakajima , Rainer R. Schoch

(イラスト・文 ふらぎ)
恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2010年5月6日木曜日

ペドペンナ Pedopenna daohugouensis

Pedopenna daohugouensis
ジュラ紀後期(?)・内モンゴル

 右後肢の膝から先のみが発見されている小型の恐竜です。
中足骨には、Microraprtor guiの様に正羽が生えていた形跡が保存されています。
 今回のイラストは発見されている足先+αを描きました。
Pedopennaは鳥類ではありませんが、少なくとも足だけなら現生の生物では鳥が一番近いと思うので、足先はキジやカラス、ニワトリを、羽の生えている脛などは猛禽類の脚を参考にしています。
描き終えて見直してみると、脛の羽はこんなに長くて妥当なのかとか、脚を伸ばした時に脛の羽と足先の羽はどういう風に重なるのか(そもそも重なったのかどうか)など、全然分からない事が多いなーと思いました。
あと、羽がボロボロ過ぎるかも知れません。
:
参考にした資料
恐竜博2005図録
恐竜パンテオン
きまぐれ生物学
:
(イラスト・文 meribenni)

2010年5月2日日曜日

アエルログナトゥス Aelurognathus parringtoni

Aelurognathus parringtoni
ペルム紀後期・南アフリカ
:
 獣弓目・ゴルゴノプス亜目の仲間で、ほぼ全身の骨格が発見されている種類です。
骨格は同じゴルゴノプス科のリカエノプスによく似ています。
全長約170cmで、化石の胃の辺りからは小型のディキノドンの下顎が発見されている個体もあるそうです。
 今回のイラストは全身復元骨格やふらぎさんに頂いた画像資料を基に、ディキノドンを仕留めた直後の場面を描きました。
全身に毛を生やし、柔らかい頬や唇を持った姿で描きましたが、ここまで体毛が生えていたか・哺乳類的な顔付きだったかは全く分かりません。下顎の頬歯は少し後ろにし過ぎてしまいました。
骨格を見て、犬の様な座り方(お座りの様な姿勢)は出来ないだろうと思い、トカゲの様に地面にべったり座り込む姿勢にしました。
 また、頸肋骨がかなり短く見えたので、首を曲げられるかなと思いその様に描きました。
でも実際に頸肋骨が短いのか、発見されていないから骨をそう復元したのか分からないので、振り返る様な動作が出来たのかは分かりません。
リカエノプスには無理そうに思えるんですが・・・。
 描いている途中で疑問に思った事なんですが、この仲間は目が動かせたのかどうか気になりました。
:
参考にした資料
・"The small dicynodont Katumbia parringtoni (von Huene, 1942)(Therapsida: Dicynodontia) from the Upper Permian Kawinga Formation of Tanzania as gorgonopsian prey"
(Palaeodiversity 2, 2009.)
金子隆一
:
(イラスト・文 meribenni)

2010年4月26日月曜日

アンダルガロルニス Andalgalornis

アンダルガロルニス・ステウッレティ
Andalgalornis steulleti
頭高 約1.3m
生息地 南米
時代 中新世~鮮新世初期
 :
「恐鳥」として紹介される事もあり、また、絶滅した大型の飛べない鳥としてディアトリマと並び紹介される事も多いフォルスラコスの仲間です。人間の大人が見上げるような大きさの仲間もいるフォルスラコス類の中では、頭の高さが約130cm前後と、中型の部類になります。
最初はフォルスラコスを描こうと思ったのですが、改めて資料を調べてみると、フォルスラコスについては全身骨格図はあるものの、手持ちの資料とネットでは組み立て骨格が見つからない。ここ10年ほどのあいだに知名度があがり、書籍やテレビ番組等ではフォルスラコス類としては本家フォルスラコスよりも目立つ存在になりつつあるティタニスを候補にしてみたのですが、こちらは全身骨格があり、ネット上に画像もあるものの、アングル等の点でちょっと使いにくい。という事で、あまり知名度はありませんが、実際にシカゴ・フィールド博物館で展示を見たことがあり、その時に画像も撮っていたアンダルガロルニスになりました。
他のフォルスラコス類では確認出来ていませんが、アンダルガロルニスの後肢の第2指(接地している3本の指の一番内側)は、カーブの強い鍵爪形状になっているのが面白いです。そういえば、フォロラコス(フォルスラコスに非ず)っていたよな、と思って調べたところ、フォロラコス属は現在はアンダルガロルニス属等に含まれて、無効名になってしまっているようです。以前、『SF巨大生物の島』版フォロラコスのフィギュア商品原型を製作した事があるので、ちょっと残念だったり。
アンダルガロルニス全身骨格。
シカゴ・フィールド博物館にて撮影。


主な参考資料

・Alvarenga, Herculano M. F. & Hofling, Elizabeth (2003): Systematic revision of the Phorusrhacidae (Aves: Ralliformes). Papeis Avulsos de Zoologia 43(4): 55-91

・「Extinct Animals An Encyclopedia of Species that Have Disappeared during Human History」Ross Piper

・「Magnificent Mihirungs」
オーストラリアの絶滅した大型の飛べない鳥・ドロモルニスに関する本。ドロモルニス類以外の絶滅した大型地上性鳥類に関する記述もあり、参考になります。

・「南米に君臨した巨大肉食鳥」Larry G.Marshal
別冊日経サイエンス「地球を支配した恐竜と巨大生物たち」収録

(文・イラスト ふらぎ)















2010年4月18日日曜日

ニホングリソン (オリエンシクティス) Oriensictis nipponica

Oriensictis nipponica
更新世中期・東アジア(日本)
:
 北九州市門司の松ヶ枝洞窟で発見された食肉目・イタチ科の仲間で、現生種では中南米にのみ生息するとされるグリソン類の新属新種です。
イラストは、本種の研究者である荻野慎太郎博士に監修して頂いたものを、本ブログ用に描き直しました。

 荻野博士とのやり取りを簡単にまとめてみます。
ニホングリソンの化石は上顎と下顎の歯列の一部が発見されているだけなので、荻野博士から頂いた論文と、現生のグリソンの頭骨画像を基に頭骨の復元図を描く事にしました。
 ニホングリソンは吻部が現生や他の化石種のグリソンに比べて短く、上顎犬歯に溝があるのが特徴だそうです。それを基にラフを描き、荻野博士に見て頂きます。


 上が現生種、下がニホングリソンです。よく分からないまま描いていたので、今見ると現生種のイラストも歯はおかしいのですが、ツッコミは下のニホングリソンのみで。

1)ニホングリソンの下顎p4は単一咬頭。
2)上顎犬歯の溝は下顎犬歯の突出部と対応関係にあるので、口を閉じた状態では全く見えない。
3)上顎m1は下顎m1m2の間くらいに被さる様な対応関係。下顎歯列が少し長いかなぁ。
あとは、歯の上下の対応は互い違いなのでその辺りに気を付けてみて下さい、との事でした。

 手直ししたラフを見て頂き、概ね良しとされました。
追加のアドバイスとして、
1)ニホングリソンは肉食傾向が強く、そういった種の犬歯歯根は鼻腔の上の方まで達しているので、その質感が出せると良い。
2)肉食傾向が強いので側頭筋が発達していたはず、恐らく脳頭蓋の天辺に矢状稜があると良い。
3)普通の食肉目(グリソン含む)の下顎犬歯は、獲物に引っ掛けて逃がさない様に機能する為フック状に曲がっていて、上顎犬歯は割合真っ直ぐ。しかし、ニホングリソンの下顎犬歯は上顎犬歯の溝とのハサミ的な役割を備えているので、普通のグリソンほどフックがきつくない。

 そのアドバイスを意識しつつイラストを完成させました。
今回の鉛筆描きのイラストを描き終わってから、後頭部が短いかも?と思い、お訊きしてみた所やっぱり少し短いそうです。
 実際に研究者の方に見て頂きながら古生物を描いたのは初めてでしたが、自分では分かっていたつもりの事でも、実は全然理解出来ていなかったり、何が分かっていないのかも分かっていない状態だったんだなぁと深く感じました。また、一見それらしく描く事は出来るかも知れませんが、研究者の方無しにはしっかりとした復元画を描く事は出来ないという事も改めて理解させられました。
 最後に、素人の私にもとても分かりやすい言葉や表現でアドバイスして下さった荻野慎太郎博士に、この場を借りて感謝申し上げます。有り難う御座居ました。
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参考にした資料
・"New middle Pleistocene Galictini (Mustelidae, Carnivora) from the Matsugae cave deposits, northern Kyushu, West Japan"(Paleontlogical Research, Vol. 12, June 30, 2008)
Shintaro Ogino, Hiroyuki Otsuka
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(イラスト・文 meribenni)

2010年4月13日火曜日

バルボウロフェリス Barbourofelis sp.

Barbourofelis sp.
中新世・北アメリカ
:
 ネコに似た食肉目の仲間ですが、ネコ科ではなくバルボウロフェリス科に属します。イラストは復元された全身の骨格を基に描いています。
 顔などは大型のネコの様に描かれる事があります。しかし、頭骨を見ると、ネコよりも側面に位置する眼窩や発達した矢状稜など、ネコとは異なる特徴がある事が分かります。頭はそういった部分を意識しつつ描きました。
 体は、非常にがっしりしていて筋肉質なのが骨格から分かるのでその様に描きましたが、特に根拠無く蹠行性にしてしまいました。複数の復元された組み立て骨格を見ると全て趾行性に見えます。
"The Big Cats and Their Fossil Relatives"という本に載っている復元画家・Mauricio Anton氏のイラストでは、Barbourofelisが蹠行性で描いてあるので、こちらには何か根拠となる説があるのかも知れません。
後付けな理由だと、がっしりした体付きから待ち伏せ型のハンターである事ははっきりしており、また獲物を抑え付ける力・短時間で仕留める犬歯を持っている為、走るスピードをそれ程必要としない蹠行性でもおかしくはないとも言えます。
でもこれは骨格を調べての話では無いので、復元と言うには苦しいかもしれません。
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参考にした資料
・"The Big Cats and Their Fossil Relatives: An Illustrated Guide to Their Evolution and Natural History"
Alan Turner, Mauricio Anton
・"After the Dinosaurs: The Age of Mammals"
Dnald R.Prothero
・"Barbourofelis (Nimravidae) and Nimravides (Felidae), with a description of two new species from the late Miocene of Florida"
(Journal of Mamalogy, Vol.62, No.1, 1981)
Jon A. Baskin
(イラスト・文 meribenni)


2010年4月11日日曜日

トリケラトプス  Triceratops  


トリケラトプス Triceratops
白亜紀後期(マーストリヒト期)
北米


 先日、ディプロドクスの頭骨の形が成長過程で変化する、という発表がありましたが、ディプロドクス以外の恐竜・古生物でもこうした成長過程での形質の変化、Ontogeny個体発生と呼ばれる分野のの研究・発表は数多くあります。その中でも、変化の様子が判りやすく面白い例の一つと思われるのが、トリケラトプスの頭骨の研究です。その頭骨の形の変化は、"Major cranial changes during Triceratops ontogeny"の中の頭骨の画像を見ていただければ一目瞭然ですが、今回は簡単にそれの復元版を描いてみました。左から、赤ちゃん、幼体、成体です。実際には、さらに細かく成長段階が研究されていますし、もちろん雌雄差・個体差もあると思われます。

 頭骨全体のバランスも見た目どおりに違いがありますが、その他には、眼の上の2本の角の向き、フリルの周りの棘の形状の変化がポイントとして挙げられています。フリルの周囲の棘は、赤ん坊~子供の間は鋭く、成長するほど目立たなくなるようです。また、角竜の角はステゴサウルスの尻尾のスパイクに比べると骨密度それほど高くないそうで、成体のトリケラの角は武器としての目的よりも、同種間でのアピールのほうが主だったのでは、と最近では考えられているようです。と言っても、武器として全く機能しないほど脆い、という訳でもないでしょうし、いざとなれば武器としてもその役割をそれなりに果たせたのでは、と思います。


参考資料

John R. Horner and Mark B. Goodwin
"Major cranial changes during Triceratops ontogeny"
Mark B. Goodwin, William A. Clemens, John R. Horner and Kevin Padian
"The Smallest Known Triceratops Skull: New Observations on Ceratopsid Cranial Anatomy and Ontogeny"

Science Daily:Smallest Triceratops Skull Ever Found Provides Clues To Dinosaur's Growth
The horned dinosaurs
「Bizarre Dinosaur」 
 幼体から成体までの頭骨が並んだ画像があります。
「AL」
 主人公のトリケラトプスは、現在の研究を反映させたデザインになっています。

(文・イラスト ふらぎ)

2010年4月5日月曜日

ボロファグス Borophagus sp.

Borophagus sp.
中新世~鮮新世・北アメリカ
 食肉目・イヌ科の仲間です。このボロファグス属を含むボロファグス亜科は北アメリカで繁栄し、これまでに66種類が発見されています。
ボロファグス亜科の多くの種は、今日のイヌ科とブチハイエナの中間の様な形態をしており、頭骨の特徴から骨を噛み砕く事が出来たとされ、"bone-crushing dog"または"hyena-like dog"等と呼ばれています。
大きな骨を噛み割るのには上顎第四小臼歯(裂肉歯、p4)と発達した下顎の第四小臼歯(p4)を使い、小さな骨は上顎第四小臼歯と下顎の裂肉歯である第一臼歯(m1)で噛む、という様に噛む物のサイズに合わせて歯を使い分けていた様です。
 イラストはボロファグス属の頭骨を基に描きました。短い吻とドーム状の頭、張り出した頬骨弓が印象的なので、少し強調し過ぎてしまったかも知れません。凶暴なチワワという感じになってしまいました。
咥えているのは同時期に生息していた三本指のウマ・ヒッパリオンの足です。ボロファグスの顔と比べると少し小さいかもしれません。
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参考にした資料
・"Pack Hunting in Miocene Borophagine Dogs: Evidence from Craniodental Morphology and Body Size"
Blaire Van Valkenburgh, Tyson Sacco, Xiaoming Wang
Bulletin American Museum of Natural History No.279, Chapter 7
・"Dogs: Their Fossil Relatives and Evolutionary History "
Xiaoming Wang, Richard H. Tedford
(イラスト・文 meribenni)

プロトプテルム科 Plotopteridae


プロトプテルム科 Plotopteridae

漸新世・北米太平洋岸、日本

日本で標本が多数発見されているので、国内でも骨格復元標本を見る機会が多い古生物です。
以前、プロトプテルムに関しての発表を聞く機会があり、それ以来興味が湧いてきました。今回のイラストは、千葉県我孫子市・鳥の博物館に展示されている全身骨格を元に描いています。属・種小名までは判りませんでした。
























我孫子市・鳥の博物館の展示



参考資料

「鳥の骨探」P318-321
「みんなが知りたいペンギンの秘密」
・「ペンギンのルーツをさぐる」(我孫子市・鳥の博物館)

また、古環境の考慮については友人の某古生物研究者から指摘を、現生の潜水・遊泳性の海鳥については、動物を得意とされているイラストレーター
いずもり・ようさんからアドバイスを頂きました。

(イラスト・文 ふらぎ)

*追記
2011年に瑞浪市化石博物館特別展用にプロトプテルム類のコペプテリクスの復元模型を担当しました。(ふらぎ)

2010年3月27日土曜日

ゴンフォテリウム Gomphotherium sp.

Gomphotherium sp.
中新世・ユーラシア、アフリカ、北アメリカ
:
 ゾウの進化を知る上で、非常に重要な位置付けにあるゾウ・ゴンフォテリウムです。
今回のイラストは、神奈川県立生命の星・地球博物館に展示してある復元全身骨格(2・3枚目の画像)を基に描きました。
 他の種類のGomphotheriumの全身骨格をご覧になった事のある方はお気付きと思いますが、この骨格は頭がとても大きいです。Gomphotheriumは脚が短く復元される事が多いので、相対的に胴が長く見えたり頭が大きく感じられますが、この骨格はそういう要素を抜きにしても大きいです。
肉付けした時、この大きな頭が不自然に見えないかと思っていたのですが、描き上げてみるとそこまでおかしくは無いかもしれません。
 Gomphotheriumについて気になっている事があります。それは、下顎の内側のどの辺りまでが口の中と同じ様な粘膜だったのかという事です。また、舌がどの辺りにあったか(どの辺りまで届いたか)も同じく気になります。
まず化石には残らないので分からないとは言われるものの、面白いのでよく人にご意見を求めています。

(イラスト・文 meribenni)

2010年3月16日火曜日

エティオケタス ウェルトニ Aetiocetus weltoni


Aetiocetus weltoni
漸新世・北アメリカ
:
 前回投稿したのと同じ「歯のあるヒゲクジラ」・Aetiocetus属の一種で、保存状態の良い頭骨の化石にはヒゲが生えていたとされる特徴が認められます。
 weltoni種の歯は現生のハクジラの様に全て同じ形になりつつあったものの、それぞれの形はわずかに異なっています。Aetiocetus属のクジラが獲物を捕らえる際には、獲物となる生き物のサイズや習性により(群れか単独か)、ヒゲと歯を使い分けていたと考えられる様です。
 頭部のイラストは復元された頭骨イラストを、全身イラストは足寄化石動物博物館に展示されているA. polydentatusの全身復元骨格を基にして描きました。
 weltoni種は、polydentatus種の頭骨と比べると鼻の位置がより前方にあり、また歯の数も少ない事から、polydentatus種よりも古いタイプの顔付きだったかも知れないと思い、ハクジラ的な顔に描きました。ただ鼻の位置は兎も角Aetiocetus属での歯の数の違いが、現生の進化したハクジラの歯が増えるのと同じ意味なのかは分からないのでそこはちょっとこじつけっぽいですね。
生息時期も、どちらも漸新世後期(チャッティアン)だというところまでしか分かりませんでした。
 全身イラストでは後肢を体の外に出さない様にしましたが、参考にしたpolydentatus種の骨格の通りに描くと出てしまうかも知れません。しかし、この時期のクジラの復元図では後肢を描いているものが無いので、それに倣いました。また、少なくともweltoni種では後肢の化石は発見されていない様なので、描かないのが無難だとも判断しました。
:
参考にした資料
・"Skull anatomy of the Oligocene toothed mysticeteAetioceus weltoni (Mammalia; Cetacea): implications formysticete evolution and functional anatomy"
Thomas A. Demere, Annalisa Berta
(Zoological Journal of the Society, 2008)

・追記
考えてみたら、歯が多いのがより進んだ形質だとして、それがハクジラ的な進化と同じとするとpolydentatus種の方をよりハクジラっぽく描かないと筋が通らないですね。

(イラスト・文 meribenni)

2010年3月13日土曜日

クリオロフォサウルス Cryolophosaurus ellioti

















クリオロフォサウルス 
Cryolophosaurus ellioti
ジュラ紀前期
南極大陸


特徴的なトサカと、南極で発見された、という事で、発表された時から話題性が高かった肉食恐竜です。2009年に国立科学博物館で開催された大恐竜展で撮影した全身骨格をベースに描いています。
 今回は、一つの試みとして、シルエットは全身骨格を元にしつつ、実際に化石が見つかった箇所のみディテールを描き込んでいます。古生物の化石というのは、全身すべてが見つかるのは非常に稀で、足りない部分は、同じ恐竜のほかの標本や、近縁種を元に復元します。
2009年の大恐竜展の図録には、このクリオロフォサウルスの発見された部位を図示してあり、それだけでも十分に分かりやすいのですが、こちらで記事を書くにあたり、ちょっとお遊びで描いてみました。といっても、発見された部位に関してなら肉付けまで出来る訳では無く、当然ながら前後のつながり等も考慮しなければならないので、こういうイラストも相当に強引な表現方法ではあります。

現在、発表されているクリオロフォサウルスですが、パッとみてアロサウルス類に近縁なんだろうな、と分かるくらいにアロサウルス体型です。当初は、原始的なテタヌラ類と考えられていたようで、全身の復元にあたり、ジュラ紀のテタヌラ類として代表的なアロサウルス類を参考にしたのでは、と想像されます。
ところが、その後、2007年のNathan D. Smithによる発表では、テタヌラ類よりも原始的なディロフォサウルスに近縁である、とされました。この説に従って復元すると、従来のアロサウルス的なイメージとは随分違った姿になる可能性もあります。顔つきもそうですが、前肢の指の数も変わってしまうのかも。
という事で、クリオロフォサウルスは非常に魅力的な恐竜なのですが、現段階では迂闊に造形出来ないネタの一つなのです。もちろん、今造るなら、やはり現在発表されている
骨格を参考にするのが順当ではあるので、逆にアロサウルスタイプの復元をやるなら今のうち、という事かも知れません。

















ベルギー王立自然科学博物館にて2012年5月撮影
(2012年7月追加)

参考資料
・「大恐竜展(2009) 図録」
「The DINOSAURIA」
・Smith, Nathan D.; Makovicky, Peter J.; Hammer, William R.; and Currie, Philip J. (2007). "Osteology of Cryolophosaurus ellioti (Dinosauria: Theropoda) from the Early Jurassic of Antarctica and implications for early theropod evolution"
「肉食の系譜」


(イラスト・文 ふらぎ)



2010年3月10日水曜日

エティオケタス ポリデンタタス Aetiocetus polydentatus

Aetiocetus polydentatus
漸新世・東アジア
:
 ヒゲクジラ的な頭蓋と立派な歯列を持つ「歯のあるヒゲクジラ」、Aetiocetus属の一種です。
このpolydentatus種は特に歯の数が多く、カズハヒゲクジラという和名を付けられています(カズハ=「数歯」)。
 北アメリカで発見されたAetiocetus weltoni種の保存状態の良い頭骨化石には、歯列の内側の広い範囲にわたって、現生のヒゲクジラの頭蓋に見られるのと同じ様な特徴(ヒゲに養分を送る為の血管や神経の通る孔)がある事が分かっています。
polydentatus種ではその特徴は確認されてはいないものの、同属という事で上顎歯列の内側にヒゲを描きました。
 北海道の足寄化石動物博物館には、歯のあるヒゲクジラでは唯一の全身復元骨格が展示してあります。
 イラストは復元された頭骨の図を基に描いています。
現生のハクジラは上顎の唇が厚く、歯が隠れてしまっている種類が多いので、このイラストではヒゲと歯が見える様に上顎の唇が薄く、口を閉じた時に発達した下顎の唇がその上に被さるヒゲクジラタイプの顔にしました。復元と言うには少しやりすぎな感がありますが、実際の所はどんな口だったのでしょう。
:
参考にした資料
・"Morphological and Molecular Evidence for a Stepwise Evolutionary Transition from Teethto Baleen in Mysticete Whales"
Thomas A. Demere, Michael R. McGowen, Annalisa Berta, John Gatesy
(Systematic Biology 01 February 2008)
・"Fossil Cetacea (whales) in theOregon Western Cascades"
William N. Orr, Paul R. Miller
(Oregon Geology Vol. 45, Number 9, 1983)
・「クジラヒゲの出現‐解剖から化石へ」
澤村 寛
(勇魚49号, 2008)
・足寄化石動物博物館公式サイト

(イラスト・文 meribenni)

2010年3月4日木曜日

パトリオフェリス Patriofelis ferox

Patriofelis ferox
始新世・北アメリカ
:
 絶滅した肉食哺乳類、肉歯目の仲間です。 パトリオフェリス属は数種類発見されていて、最大の種類であるferox種は小さめのクマ程の大きさになりました。このferox種は、ワイオミング州ブリジャー盆地から全身の骨格が出ているそうです。
 パトリオフェリスはあまり早く走る事は出来なかった様で、専ら待ち伏せ型の狩りをしていたと考えられます。また、幅広の足は泳ぐのに適していたのではないかとされ(水掻きがあったとも)、半水生の生活だったという説もあります。
 イラストはferox種の全身骨格図(Osborn, 1900)を基に描きました。
ネットで検索すると、vorax種というものの全身骨格画像が出てくるのですが、このvorax種の詳細は出てきません。とても気になります。
:
参考にした資料
・"Oxyaena and Patriofelis restudiedas terrestrial Creodonts"
Henry Fairfield Osborn
(Bulletin of the American Museum of Natural History Vol.13, 1900)
・"Reconstructions of Eocene and Oligocene plants and animals ofcentral Oregon"
Gregory J. Retallack, Erick A. Bestland
(Oregon Geology Vol.58, 1996)

(イラスト・文 meribenni)



2010年3月2日火曜日

ロトサウルス Lotosaurus adentus


ロトサウルス Lotosaurus adentus

三畳紀中期 中国
全長約3m

「サウルス」とついていますが、恐竜ではありません。
「サウルス」というのは、恐竜以外の脊椎動物の学名にも
多く使われています。

ロトサウルスは、1981年の中国の恐竜展以来、
何度か恐竜博で全身骨格が展示され、現在は
福井県立恐竜博物館にも展示があるので、
マメにイベントや博物館に行っている方なら、御馴染の
と言っても良いはずなのに、影が薄気な感じ。
イラストは、恐竜博物館の骨格を若干補正しつつ
ほぼそのままトレースして描いてます。

その後、研究はどうなっているのか、
興味のある古生物。
手持ちの資料だと、1981年の恐竜展と
2004年の恐竜博でキャプションがほぼ一緒。
特に新発見・学説が無いのかなぁ。
記載論文とか見てないので、産出部位も
良く分からないから、全身骨格がどこまで正確かの
見当がつかない。
本当にこんなにしっかり直立?
同じクテノサウルス科(?)の中では、アリゾナサウルス
Arizonasaurus babbitti)が比較的有名(と思う)で、
これは論文に産出部位も載ってますが、
それによると前後肢がバッサリ未発見
(ついでに、資料によって頭骨形状が違うのも不思議)。



*追記
その後、この記事をご覧になった方から
ロトサウルスの論文のデータを頂きました。
記事にしてみて良かったです。
中国語の論文なので詳細は分かりませんが、
何となく読める文章や添付の画像を見る限り、
かなり良い保存状態の標本が複数発見されているようです。

(イラスト・文 ふらぎ)
(以上、こちらより転載)

2010年2月25日木曜日

アンドリューサルクス Andrewsarchus mongoliensis

Andrewsarchus mongoliensis
始新世後期・東アジア
 左側の頬弓が欠けた頭骨1個の化石のみによって知られているメソニクス目の仲間です。
長さ834mmの頭骨は、これまでに発見された肉食哺乳類の中では最大級の大きさです。その為、史上最大の肉食哺乳類とされていますが、正確な大きさは分かりません。
 イラストはタイプ標本の図と写真を基に描きました。下顎は発見されていないので、シルエットだけで表現しています。
:
参考にした資料
・"Andrewsarchus, giant mesonychid of Mongolia"
Henry Fairfield Osborn
(American museum novitates, Number 146, 1924) 

(イラスト・文 meribenni)

2010年2月22日月曜日

パキヤエナ Pachyaena ossifraga

Pachyaena ossifraga
始新世前期・北アメリカ
:
 絶滅した蹄を持つ肉食哺乳類・メソニクス目の仲間で、このossifraga種は数種類知られているパキヤエナ属の模式種です。
 パキヤエナ(及び何種かのメソニクス)の食性について、歯の形状などから
1)カメや魚などを食べていた(Cope, Matthew)
2)主に他の動物の死体を探して食べていた(Boule, Osborn, Scott)
3)自力で狩りをする捕食者だった(Szalay, Gould)
という説がありました。
 近年、保存状態の良い数体のパキヤエナ ossifragaの化石を調べた結果、速くは走れないものの長時間の走行・移動に適した体であった事が分かりました。この事から、パキヤエナ ossifragaは広範囲にわたって食物を探して歩き回るスカベンジャーだったという結論が導き出されました。
 イラストは、複数の化石から復元した全身骨格図を基に描いています。
:
参考にした資料
・"Functional and behavioral implications of vertebral structure in Pachyaena ossifraga (mammalia, Mesonychia)"
Xiaoyuan Zhou, William J.Sanders, and Philip D. Gingerich
(Contributions from the museum of paleontology the university of Michigan, Vol. 28, 1992)

(イラスト・文 meribenni)