2010年3月13日土曜日

クリオロフォサウルス Cryolophosaurus ellioti

















クリオロフォサウルス 
Cryolophosaurus ellioti
ジュラ紀前期
南極大陸


特徴的なトサカと、南極で発見された、という事で、発表された時から話題性が高かった肉食恐竜です。2009年に国立科学博物館で開催された大恐竜展で撮影した全身骨格をベースに描いています。
 今回は、一つの試みとして、シルエットは全身骨格を元にしつつ、実際に化石が見つかった箇所のみディテールを描き込んでいます。古生物の化石というのは、全身すべてが見つかるのは非常に稀で、足りない部分は、同じ恐竜のほかの標本や、近縁種を元に復元します。
2009年の大恐竜展の図録には、このクリオロフォサウルスの発見された部位を図示してあり、それだけでも十分に分かりやすいのですが、こちらで記事を書くにあたり、ちょっとお遊びで描いてみました。といっても、発見された部位に関してなら肉付けまで出来る訳では無く、当然ながら前後のつながり等も考慮しなければならないので、こういうイラストも相当に強引な表現方法ではあります。

現在、発表されているクリオロフォサウルスですが、パッとみてアロサウルス類に近縁なんだろうな、と分かるくらいにアロサウルス体型です。当初は、原始的なテタヌラ類と考えられていたようで、全身の復元にあたり、ジュラ紀のテタヌラ類として代表的なアロサウルス類を参考にしたのでは、と想像されます。
ところが、その後、2007年のNathan D. Smithによる発表では、テタヌラ類よりも原始的なディロフォサウルスに近縁である、とされました。この説に従って復元すると、従来のアロサウルス的なイメージとは随分違った姿になる可能性もあります。顔つきもそうですが、前肢の指の数も変わってしまうのかも。
という事で、クリオロフォサウルスは非常に魅力的な恐竜なのですが、現段階では迂闊に造形出来ないネタの一つなのです。もちろん、今造るなら、やはり現在発表されている
骨格を参考にするのが順当ではあるので、逆にアロサウルスタイプの復元をやるなら今のうち、という事かも知れません。

















ベルギー王立自然科学博物館にて2012年5月撮影
(2012年7月追加)

参考資料
・「大恐竜展(2009) 図録」
「The DINOSAURIA」
・Smith, Nathan D.; Makovicky, Peter J.; Hammer, William R.; and Currie, Philip J. (2007). "Osteology of Cryolophosaurus ellioti (Dinosauria: Theropoda) from the Early Jurassic of Antarctica and implications for early theropod evolution"
「肉食の系譜」


(イラスト・文 ふらぎ)