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2011年10月3日月曜日

デスモスチルス Desmostylus sp.

Desmostylus
デスモスチルス

北太平洋沿岸 
中新世
:
 瑞浪市化石博物館用に描いたデスモスチルスです。
足寄化石動物博物館で展示されている、犬塚則久博士による復元骨格を基にして、海底をゆっくり歩いている様子を描きました。
皮下脂肪はかなり厚めにしているので、全体的に丸っこくなっています。  
 口の周りには太めのヒゲを生やしています。
頭骨の特徴から、デスモスチルスはジュゴンなどの海牛類のように唇の周りに感覚毛(ヒゲ)が密集しており、その感覚毛を使ってエサを探していたという説があり、また、犬塚博士と甲能直樹博士(国立科学博物館)による、貝のような海底に棲む無脊椎動物を食べていたという説から、このような顔になりました。
 ヒゲを使ってエサを探す現生のセイウチも参考にしています。
水族館で飼育されているセイウチは立派なヒゲを生やしていますが、野生のセイウチのヒゲは、使っているうちに摩耗して短くなっているそうです。
確かに野生のセイウチの写真を見るとイメージしていたよりかなり短めなので、デスモスチルスのヒゲもそれに合わせて多少短くしました。

 ラフの段階で、足寄化石動物博物館の澤村寛館長と学芸員の新村龍也さんのご意見を頂き、姿勢等の参考にしました。有難う御座居ました。
参考にした資料

・「絶減哺乳類デスモスチルスの復元」(バイオメカニズム 9, 1988)犬塚則久
・「デスモスチルスの復元 その後」(地質ニュース 421, 1989)犬塚則久
“幻の奇獣”デスモスチルスを知っていますか? -絶滅哺乳類の古生態を復元する- 甲能直樹

:

(イラスト・文 meribenni) 

2011年7月7日木曜日

クバノコエルス Kubanochoerus gigas


Kubanochoerus gigas
クバノコエルス ギガス
場所 ユーラシア 
時代 中新世
 :
 クバノコエルスは絶滅した大型のイノシシで、gigas種はクバノコエルス属最大の種です。
前頭部の中央にある一本の角は、オスにだけあるとする説もあり(角の無い頭骨も発見されています)、オス同士の闘争に使ったともされます。
アフリカ中部に生息する現生のモリイノシシHylochoerus meinertzhageni のオスは、頭部に幾つかのコブ状の隆起があり、オス同士で額を打ちつけ合う闘争スタイルをもっていますが、クバノコエルスのオスの闘争も幾分似たようなものだったかもしれません。

 クバノコエルスは以前から描いてみたいなあと思っていたものの、頭骨の写真以外に資料が無くて描けなかったのですが、ふらぎさんの家で何気なく読んでいた本に復元全身骨格の写真が載っていたので、それをもとにしました。

 全身の絵では顔が分かり難かったので、頭の絵を追加しました。
眼窩の上にも一対の角もしくはコブがあります。
参考にした中国で発見された頭骨は、額の角が若干鼻先に向かってゆるく曲がっているので、そのままの形で角を描きました。
しかし、グルジアで発見された頭骨(同じgigas種)をもとに描かれたMauricio Anton氏のイラストでは、角はまっすぐになっています。
個体差なのか、曲がっている方は土圧で歪んでいるのか、調べ切れなかったので気になるところです。

主な参考資料
・「中國古生物」(出版社不明)
(Alan Turner & Mauricio Anton / 訳;冨田 幸光 / 丸善株式会社)
(Jordi Agusti & Mauricio Anton / Columbia Univ Pr)
"East African Mammals : An Atlas of Evolution in Africa, Part B : Large Mammals"
(Jonathan Kingdon / Univ of Chicago Press)

(イラスト、文 meribenni)

2011年7月1日金曜日

シノニクス Sinonyx jiashanensis



Sinonyx jiashanensis
シノニクス ジアシャネンシス
暁新世後期 東アジア(中国)
 シノニクスは、絶滅した蹄を持つ雑食~肉食哺乳類・メソニクス目に属します。
短い四肢に長い尾、体に不釣り合いに見えるほど大きな頭を持つなど、現生の哺乳類には無い様な独特なフォルムをしていました。
その頭骨の非常に発達した矢状稜が、個人的にはとてもかっこよく思えてかなり好きな古生物です。
 今回のイラストは、国立科学博物館名古屋港水族館に展示してある全身復元骨格をもとに描きました。他に形態に関する資料があまり見付からなかったので、ほぼ全身骨格からのみの復元です。
全体的なイメージは、以前描いたパキヤエナの論文からの類推、また現生の食肉目を参考にしました。
 描き上げてから見直すと、スカベンジャーっぽくイノシシ的な雰囲気を出した方が、よりそれらしい感じだったかな? とも思います。
また、後肢の中足骨の部分が長過ぎるのでちょっと良くないですね。
上の二点に気を付けて、また描いてみたい古生物です。

主な参考資料
・シノニクス全身復元骨格
"Functional and behavioral implications of vertebral structure in Pachyaena ossifraga (mammalia, Mesonychia)"

Xiaoyuan Zhou, William J.Sanders, and Philip D. Gingerich
(Contributions from the museum of paleontology the university of Michigan, Vol. 28, 1992)

Xiaoming Wang & Richard H. Tedford, Mauricio Anton (Columbia University Press)
Jonathan Kingdon (Univ of Chicago Press)
Jonathan Kingdon (Univ of Chicago Press)

(イラスト・文 meribenni)


 シノニクスを含むメソニクス目は、鯨類の直接の祖先の一群として長年重要視されてきましたが、ここ20年ほどの間の新発見や分子解析等、化石・現生動物双方の研究から、現在では鯨類の先祖という地位からすべり落ちてしまいました。とはいえ、meribenniさんの解説にもある通り、なかなか個性的な頭骨や蹄に近い形状をしていたとされる足等、復元の題材としては魅力的な動物である事に変わりありません。
(ふらぎ)

2010年10月17日日曜日

キロテリウム Chilotherium pugnator

Chilotherium pugnator
キロテリウム・プグナトル
日本
中新世

:
 キロテリウム属はサイの仲間ですが、現生のサイの様な角は無く、下顎の切歯が2本大きく前に突き出していました。
今回描いたのは、岐阜県可児市で発見されたpugnator種(カニサイ)です。
と言っても、可児の化石は下顎メインだったりするので、主に同属のanderssoniの復元全身骨格を基に、また、現生のシロサイの写真を参考に描いています。
 頭骨は、上顎に比べ下顎がかなり長く、生存時は物凄く受け口だったのでは、という感じに見えます。しかし、現生のサイも含め大抵の哺乳類は、頬や唇などとても多くの軟組織が顔に付くので、生きている状態だけを見ると頭骨の形はかなり分かりにくいです。骨だけだと印象深い部位も、生体を見ると肉に隠れてほとんど分からなかったりもします。
そんな訳で、下顎も極端に受け口にはせず、切歯が唇からはみ出る程度の顔付きに描きました。
 描き終えて見直すと、首の盛り上がった肉は少しやりすぎたかな、と思いました。キロテリウムの胸椎の棘突起はシロサイの棘突起程には発達していない様なので、シロサイより控えめに描いた方がよりらしく見えたかも知れません。
 この絵は、岐阜県瑞浪市の瑞浪市化石博物館で開催されている第74回特別展・「よみがえる日本の哺乳類たち」の会場に、カニサイの化石と共に展示されています。今日10月17日から12月26日までですので、お近くにお住まいの方は是非ご来場下さい。
:
主に参考にした資料
Jordi Aqusti, Mauricio Anton
・"East African Mammals ⅢB" Jonathan Kingdon
(イラスト・文 meribenni)

2010年8月31日火曜日

ゴンフォテリウム Gomphotherium annectens

 岐阜県瑞浪市にある瑞浪市化石博物館で、2010年10月17日~12月26日の期間、第74回特別展「よみがえる日本の哺乳類たち」が開催されます。
その特別展に向けて、瑞浪市周辺で化石が発見された絶滅哺乳類の復元イラストの制作依頼を受けました。
そのうちの一つが、このGomphotherium annectensです。これ以外にも、数種類の絶滅哺乳類のカラーイラストを制作中です。
特別展で展示されるので、お近くにお住まいの方は是非見にいらして下さい。
:
(イラスト・文 meribenni)

2010年5月28日金曜日

カンディアケルヴス Candiacervus sp.

Candiacervus sp.
更新世~完新世・クレタ島
:
 クレタ島で発見された固有のシカ・Candiacervus属です。これまでに数種類が知られています。
クレタ島には大型の捕食者がいなかったので、素早く逃げる必要が無い為にこのシカの脚は短くなりました。
安定性が増した体は、山地の環境で生活するのに有利だった様です。
 Candiacervus属最小のropalophorus種以外の種は、気候が温暖化した際に海水面の上昇などによる生息環境の変化を受けて絶滅していったとされます。しかし生き延びたropalophorus種も、恐らくヒトとの接触により絶滅した様です。
 今回のイラストは、ギリシャのMuseum of Palaeontology and Geology of University of Athensに展示する為に作られた復元骨格を基に描きました。
この復元された骨格はCandiacervus属の二番目に小さな種類で、同じ場所・地層で発見された複数のオスの骨と、三種類ある角のタイプの内一つを組み合わせて作られたそうです。
描いた後で、膝を伸ばしすぎたせいで腰が少し高くなっているのがおかしいなと気付きました。また、少し資料を探していたら、このシカの角は先の方が薄く平たかったらしい事が書いてあり、この絵はそこを間違えているのが一番問題かな、という感じです。
:
参考にした資料
・"The mounting of a skelton of the fossil species Candiacervus sp. Ⅱ from Liko Cave, Crete, Greece"
(Insular Vertebrate Evolution vol. 12, p.337~346, 2005)
Alexandra Van Der Geer, John De Vos, George Lyras & Michael Dermitzakis
・"Relative growth of the Metapodals in a Juvenile island deer:Candiacervus (Mammalia, Cervidae) from the Pleistocene of Crete"
(Hellenic Journal of Geosciences, vol. 41, p.119-125)
Alexandra Van Der Geer, Michael Dermitzakis & John De Vos
・"Pleistocene Deer Fauna in Crete: Its Adaptive Radiation and Extinction"
John De Vos
(日本熱帯生態学会誌 vo.1, 2000, p.125~134)
(文・イラスト meribenni)
 

2010年5月18日火曜日

デスモスチルス Desmostylus sp.

Desmostylus sp.
中新世・北太平洋沿岸
:
 日本を代表する絶滅哺乳類で、現生に子孫を残さず絶えた束柱目に属します。円柱を数本束ねた様な形の非常に特徴的な臼歯を持ち、それが束柱目という名前の由来になっています。

 犬塚則久博士による復元骨格を基にした図(上)と、ドムニング博士による復元骨格を基にした図(下)の2点を描きました。
 犬塚復元は、四肢が体幹から横に張り出した側方型の体型なのに対し、ドムニング復元は四肢が体の下に伸びる下方型の体型に復元されています。
ドムニング復元のイラストを見た知人に指摘された事の中で、「図のように肘を張り出させない状態にすると、指先が外側を向く」というのが面白いなと感じました。

 デスモスチルスの復元といえばすぐに犬塚復元を思い浮かべますが、一般的な哺乳類然とした雰囲気のドムニング復元骨格も一度は見てみたいです。日本には無い様なのでなかなか難しいかもしれませんが。
:
参考にした資料
・「絶減哺乳類デスモスチルスの復元」(バイオメカニズム 9, 1988)犬塚則久
・「デスモスチルスの復元 その後」(地質ニュース 421, 1989)犬塚則久
・「絶滅した日本の巨獣」(築地書館, 1989)井尻正二、犬塚則久
・「生体力学モデルと機械モデルによる絶滅哺乳類デスモスチルスの歩行復元」(バイオメカニズム 15, 1999)山崎信寿, 梅田昌弘, 池内康
:
(イラスト・文 meribenni)

2010年4月18日日曜日

ニホングリソン (オリエンシクティス) Oriensictis nipponica

Oriensictis nipponica
更新世中期・東アジア(日本)
:
 北九州市門司の松ヶ枝洞窟で発見された食肉目・イタチ科の仲間で、現生種では中南米にのみ生息するとされるグリソン類の新属新種です。
イラストは、本種の研究者である荻野慎太郎博士に監修して頂いたものを、本ブログ用に描き直しました。

 荻野博士とのやり取りを簡単にまとめてみます。
ニホングリソンの化石は上顎と下顎の歯列の一部が発見されているだけなので、荻野博士から頂いた論文と、現生のグリソンの頭骨画像を基に頭骨の復元図を描く事にしました。
 ニホングリソンは吻部が現生や他の化石種のグリソンに比べて短く、上顎犬歯に溝があるのが特徴だそうです。それを基にラフを描き、荻野博士に見て頂きます。


 上が現生種、下がニホングリソンです。よく分からないまま描いていたので、今見ると現生種のイラストも歯はおかしいのですが、ツッコミは下のニホングリソンのみで。

1)ニホングリソンの下顎p4は単一咬頭。
2)上顎犬歯の溝は下顎犬歯の突出部と対応関係にあるので、口を閉じた状態では全く見えない。
3)上顎m1は下顎m1m2の間くらいに被さる様な対応関係。下顎歯列が少し長いかなぁ。
あとは、歯の上下の対応は互い違いなのでその辺りに気を付けてみて下さい、との事でした。

 手直ししたラフを見て頂き、概ね良しとされました。
追加のアドバイスとして、
1)ニホングリソンは肉食傾向が強く、そういった種の犬歯歯根は鼻腔の上の方まで達しているので、その質感が出せると良い。
2)肉食傾向が強いので側頭筋が発達していたはず、恐らく脳頭蓋の天辺に矢状稜があると良い。
3)普通の食肉目(グリソン含む)の下顎犬歯は、獲物に引っ掛けて逃がさない様に機能する為フック状に曲がっていて、上顎犬歯は割合真っ直ぐ。しかし、ニホングリソンの下顎犬歯は上顎犬歯の溝とのハサミ的な役割を備えているので、普通のグリソンほどフックがきつくない。

 そのアドバイスを意識しつつイラストを完成させました。
今回の鉛筆描きのイラストを描き終わってから、後頭部が短いかも?と思い、お訊きしてみた所やっぱり少し短いそうです。
 実際に研究者の方に見て頂きながら古生物を描いたのは初めてでしたが、自分では分かっていたつもりの事でも、実は全然理解出来ていなかったり、何が分かっていないのかも分かっていない状態だったんだなぁと深く感じました。また、一見それらしく描く事は出来るかも知れませんが、研究者の方無しにはしっかりとした復元画を描く事は出来ないという事も改めて理解させられました。
 最後に、素人の私にもとても分かりやすい言葉や表現でアドバイスして下さった荻野慎太郎博士に、この場を借りて感謝申し上げます。有り難う御座居ました。
:
参考にした資料
・"New middle Pleistocene Galictini (Mustelidae, Carnivora) from the Matsugae cave deposits, northern Kyushu, West Japan"(Paleontlogical Research, Vol. 12, June 30, 2008)
Shintaro Ogino, Hiroyuki Otsuka
:
(イラスト・文 meribenni)

2010年4月13日火曜日

バルボウロフェリス Barbourofelis sp.

Barbourofelis sp.
中新世・北アメリカ
:
 ネコに似た食肉目の仲間ですが、ネコ科ではなくバルボウロフェリス科に属します。イラストは復元された全身の骨格を基に描いています。
 顔などは大型のネコの様に描かれる事があります。しかし、頭骨を見ると、ネコよりも側面に位置する眼窩や発達した矢状稜など、ネコとは異なる特徴がある事が分かります。頭はそういった部分を意識しつつ描きました。
 体は、非常にがっしりしていて筋肉質なのが骨格から分かるのでその様に描きましたが、特に根拠無く蹠行性にしてしまいました。複数の復元された組み立て骨格を見ると全て趾行性に見えます。
"The Big Cats and Their Fossil Relatives"という本に載っている復元画家・Mauricio Anton氏のイラストでは、Barbourofelisが蹠行性で描いてあるので、こちらには何か根拠となる説があるのかも知れません。
後付けな理由だと、がっしりした体付きから待ち伏せ型のハンターである事ははっきりしており、また獲物を抑え付ける力・短時間で仕留める犬歯を持っている為、走るスピードをそれ程必要としない蹠行性でもおかしくはないとも言えます。
でもこれは骨格を調べての話では無いので、復元と言うには苦しいかもしれません。
:
参考にした資料
・"The Big Cats and Their Fossil Relatives: An Illustrated Guide to Their Evolution and Natural History"
Alan Turner, Mauricio Anton
・"After the Dinosaurs: The Age of Mammals"
Dnald R.Prothero
・"Barbourofelis (Nimravidae) and Nimravides (Felidae), with a description of two new species from the late Miocene of Florida"
(Journal of Mamalogy, Vol.62, No.1, 1981)
Jon A. Baskin
(イラスト・文 meribenni)


2010年4月5日月曜日

ボロファグス Borophagus sp.

Borophagus sp.
中新世~鮮新世・北アメリカ
 食肉目・イヌ科の仲間です。このボロファグス属を含むボロファグス亜科は北アメリカで繁栄し、これまでに66種類が発見されています。
ボロファグス亜科の多くの種は、今日のイヌ科とブチハイエナの中間の様な形態をしており、頭骨の特徴から骨を噛み砕く事が出来たとされ、"bone-crushing dog"または"hyena-like dog"等と呼ばれています。
大きな骨を噛み割るのには上顎第四小臼歯(裂肉歯、p4)と発達した下顎の第四小臼歯(p4)を使い、小さな骨は上顎第四小臼歯と下顎の裂肉歯である第一臼歯(m1)で噛む、という様に噛む物のサイズに合わせて歯を使い分けていた様です。
 イラストはボロファグス属の頭骨を基に描きました。短い吻とドーム状の頭、張り出した頬骨弓が印象的なので、少し強調し過ぎてしまったかも知れません。凶暴なチワワという感じになってしまいました。
咥えているのは同時期に生息していた三本指のウマ・ヒッパリオンの足です。ボロファグスの顔と比べると少し小さいかもしれません。
:
参考にした資料
・"Pack Hunting in Miocene Borophagine Dogs: Evidence from Craniodental Morphology and Body Size"
Blaire Van Valkenburgh, Tyson Sacco, Xiaoming Wang
Bulletin American Museum of Natural History No.279, Chapter 7
・"Dogs: Their Fossil Relatives and Evolutionary History "
Xiaoming Wang, Richard H. Tedford
(イラスト・文 meribenni)

2010年3月27日土曜日

ゴンフォテリウム Gomphotherium sp.

Gomphotherium sp.
中新世・ユーラシア、アフリカ、北アメリカ
:
 ゾウの進化を知る上で、非常に重要な位置付けにあるゾウ・ゴンフォテリウムです。
今回のイラストは、神奈川県立生命の星・地球博物館に展示してある復元全身骨格(2・3枚目の画像)を基に描きました。
 他の種類のGomphotheriumの全身骨格をご覧になった事のある方はお気付きと思いますが、この骨格は頭がとても大きいです。Gomphotheriumは脚が短く復元される事が多いので、相対的に胴が長く見えたり頭が大きく感じられますが、この骨格はそういう要素を抜きにしても大きいです。
肉付けした時、この大きな頭が不自然に見えないかと思っていたのですが、描き上げてみるとそこまでおかしくは無いかもしれません。
 Gomphotheriumについて気になっている事があります。それは、下顎の内側のどの辺りまでが口の中と同じ様な粘膜だったのかという事です。また、舌がどの辺りにあったか(どの辺りまで届いたか)も同じく気になります。
まず化石には残らないので分からないとは言われるものの、面白いのでよく人にご意見を求めています。

(イラスト・文 meribenni)

2010年3月10日水曜日

エティオケタス ポリデンタタス Aetiocetus polydentatus

Aetiocetus polydentatus
漸新世・東アジア
:
 ヒゲクジラ的な頭蓋と立派な歯列を持つ「歯のあるヒゲクジラ」、Aetiocetus属の一種です。
このpolydentatus種は特に歯の数が多く、カズハヒゲクジラという和名を付けられています(カズハ=「数歯」)。
 北アメリカで発見されたAetiocetus weltoni種の保存状態の良い頭骨化石には、歯列の内側の広い範囲にわたって、現生のヒゲクジラの頭蓋に見られるのと同じ様な特徴(ヒゲに養分を送る為の血管や神経の通る孔)がある事が分かっています。
polydentatus種ではその特徴は確認されてはいないものの、同属という事で上顎歯列の内側にヒゲを描きました。
 北海道の足寄化石動物博物館には、歯のあるヒゲクジラでは唯一の全身復元骨格が展示してあります。
 イラストは復元された頭骨の図を基に描いています。
現生のハクジラは上顎の唇が厚く、歯が隠れてしまっている種類が多いので、このイラストではヒゲと歯が見える様に上顎の唇が薄く、口を閉じた時に発達した下顎の唇がその上に被さるヒゲクジラタイプの顔にしました。復元と言うには少しやりすぎな感がありますが、実際の所はどんな口だったのでしょう。
:
参考にした資料
・"Morphological and Molecular Evidence for a Stepwise Evolutionary Transition from Teethto Baleen in Mysticete Whales"
Thomas A. Demere, Michael R. McGowen, Annalisa Berta, John Gatesy
(Systematic Biology 01 February 2008)
・"Fossil Cetacea (whales) in theOregon Western Cascades"
William N. Orr, Paul R. Miller
(Oregon Geology Vol. 45, Number 9, 1983)
・「クジラヒゲの出現‐解剖から化石へ」
澤村 寛
(勇魚49号, 2008)
・足寄化石動物博物館公式サイト

(イラスト・文 meribenni)

2010年3月4日木曜日

パトリオフェリス Patriofelis ferox

Patriofelis ferox
始新世・北アメリカ
:
 絶滅した肉食哺乳類、肉歯目の仲間です。 パトリオフェリス属は数種類発見されていて、最大の種類であるferox種は小さめのクマ程の大きさになりました。このferox種は、ワイオミング州ブリジャー盆地から全身の骨格が出ているそうです。
 パトリオフェリスはあまり早く走る事は出来なかった様で、専ら待ち伏せ型の狩りをしていたと考えられます。また、幅広の足は泳ぐのに適していたのではないかとされ(水掻きがあったとも)、半水生の生活だったという説もあります。
 イラストはferox種の全身骨格図(Osborn, 1900)を基に描きました。
ネットで検索すると、vorax種というものの全身骨格画像が出てくるのですが、このvorax種の詳細は出てきません。とても気になります。
:
参考にした資料
・"Oxyaena and Patriofelis restudiedas terrestrial Creodonts"
Henry Fairfield Osborn
(Bulletin of the American Museum of Natural History Vol.13, 1900)
・"Reconstructions of Eocene and Oligocene plants and animals ofcentral Oregon"
Gregory J. Retallack, Erick A. Bestland
(Oregon Geology Vol.58, 1996)

(イラスト・文 meribenni)



2010年2月25日木曜日

アンドリューサルクス Andrewsarchus mongoliensis

Andrewsarchus mongoliensis
始新世後期・東アジア
 左側の頬弓が欠けた頭骨1個の化石のみによって知られているメソニクス目の仲間です。
長さ834mmの頭骨は、これまでに発見された肉食哺乳類の中では最大級の大きさです。その為、史上最大の肉食哺乳類とされていますが、正確な大きさは分かりません。
 イラストはタイプ標本の図と写真を基に描きました。下顎は発見されていないので、シルエットだけで表現しています。
:
参考にした資料
・"Andrewsarchus, giant mesonychid of Mongolia"
Henry Fairfield Osborn
(American museum novitates, Number 146, 1924) 

(イラスト・文 meribenni)

2010年2月22日月曜日

パキヤエナ Pachyaena ossifraga

Pachyaena ossifraga
始新世前期・北アメリカ
:
 絶滅した蹄を持つ肉食哺乳類・メソニクス目の仲間で、このossifraga種は数種類知られているパキヤエナ属の模式種です。
 パキヤエナ(及び何種かのメソニクス)の食性について、歯の形状などから
1)カメや魚などを食べていた(Cope, Matthew)
2)主に他の動物の死体を探して食べていた(Boule, Osborn, Scott)
3)自力で狩りをする捕食者だった(Szalay, Gould)
という説がありました。
 近年、保存状態の良い数体のパキヤエナ ossifragaの化石を調べた結果、速くは走れないものの長時間の走行・移動に適した体であった事が分かりました。この事から、パキヤエナ ossifragaは広範囲にわたって食物を探して歩き回るスカベンジャーだったという結論が導き出されました。
 イラストは、複数の化石から復元した全身骨格図を基に描いています。
:
参考にした資料
・"Functional and behavioral implications of vertebral structure in Pachyaena ossifraga (mammalia, Mesonychia)"
Xiaoyuan Zhou, William J.Sanders, and Philip D. Gingerich
(Contributions from the museum of paleontology the university of Michigan, Vol. 28, 1992)

(イラスト・文 meribenni)