2011年10月3日月曜日

デスモスチルス Desmostylus sp.

Desmostylus
デスモスチルス

北太平洋沿岸 
中新世
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 瑞浪市化石博物館用に描いたデスモスチルスです。
足寄化石動物博物館で展示されている、犬塚則久博士による復元骨格を基にして、海底をゆっくり歩いている様子を描きました。
皮下脂肪はかなり厚めにしているので、全体的に丸っこくなっています。  
 口の周りには太めのヒゲを生やしています。
頭骨の特徴から、デスモスチルスはジュゴンなどの海牛類のように唇の周りに感覚毛(ヒゲ)が密集しており、その感覚毛を使ってエサを探していたという説があり、また、犬塚博士と甲能直樹博士(国立科学博物館)による、貝のような海底に棲む無脊椎動物を食べていたという説から、このような顔になりました。
 ヒゲを使ってエサを探す現生のセイウチも参考にしています。
水族館で飼育されているセイウチは立派なヒゲを生やしていますが、野生のセイウチのヒゲは、使っているうちに摩耗して短くなっているそうです。
確かに野生のセイウチの写真を見るとイメージしていたよりかなり短めなので、デスモスチルスのヒゲもそれに合わせて多少短くしました。

 ラフの段階で、足寄化石動物博物館の澤村寛館長と学芸員の新村龍也さんのご意見を頂き、姿勢等の参考にしました。有難う御座居ました。
参考にした資料

・「絶減哺乳類デスモスチルスの復元」(バイオメカニズム 9, 1988)犬塚則久
・「デスモスチルスの復元 その後」(地質ニュース 421, 1989)犬塚則久
“幻の奇獣”デスモスチルスを知っていますか? -絶滅哺乳類の古生態を復元する- 甲能直樹

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(イラスト・文 meribenni) 

2011年9月22日木曜日

スタレクケリア Stahleckeria potens
















Stahleckeria potens
スタレクケリア ポテンス

ブラジル
全長 約4m
三畳紀中期

:
スタレクケリア(スターレッケリア)は、ペルム紀から三畳紀にかけて繁栄したディキノドン類の中でも大型の動物の一つ。ディキノドン類は哺乳類へとつながる系統の中の獣弓類に含まれる動物群で、恐竜ではありません。スタレクケリアと同程度、またより大型のディキノドン類は、アルゼンチンより発見されているIschigualastia イスキグアラスティア(イスチガラスティア)が知られています。さらに大型のディキノドンと想像されてれいるものにエレファントサウルスがありますが、こちらは発見されているのが頭部の一部と断片的なため、全身のプロポーションは分っていません。

ディキノドン類は、同じ単弓類の多くが姿を消したペルム紀末の大絶滅を生き残り、その後の三畳紀の間に巨大化するものが数多く現れました。植物食であったと考えられています。

今回のイラストは、チュービンゲン大学での展示を主な参考に描いています。
















スタレクケリア(2011年 チュービンゲン大学にて撮影)


















イスキグアラスティア(2010年 東京「世界最古の恐竜展」にて撮影)



:
主な参考資料

・"Die Saugerahnlichen Reptilien" Frank Westphal

・"Staheckeria lenzii, a giant Triassic Brazilian Dicynodont"
  Romer, Alfred S. and Price, Llewellyx I.

・「恐竜大図鑑-古生物と恐竜-」(ネコ・パブリッシング社)

・「哺乳類型爬虫類」(金子隆一 朝日選書)


(イラスト・文 ふらぎ
(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2011年8月18日木曜日

オフィアコドン Ophiacodon mirus
















Ophiacodon mirus
オフィアコドン ミルス

北米
全長 1.6m
 ペルム紀前期

:

哺乳類の遠い先祖の系統とされる単弓類、以前は哺乳類型爬虫類と言われていた動物群の一種。その中でもオフィアコドンが属するペリコサウルス類は、ディメトロドンが属するスフェナコドン類やエダフォサウルス類も含まれており、ペルム紀前期に繁栄した動物群でもあります。。
オフィアコドンは、その名前の由来の「ヘビの歯」にもあるように、細い歯を持っており、そこから主に魚を捕食する半水棲動物説がある一方で、縦に高く、横幅の狭い頭部が水中での捕食には向かない、また比較的しっかりとした四肢から、主に陸上で生活していたのでは、という説もあります。
今回は、陸上生活説に基づいてイラストを描いてみました。陸上での行動を想定して、胴体は少し細めにしています。


オフィアコドンには現在複数種が報告されており、今回参考にしたフィールド博物館の骨格はmirus種になります。全長は1.6m。これが最大と言われるmajor種だと全長2.6mになると言われています。

















(全身骨格 2007年 シカゴ・フィールド博物館にて撮影)


主な参考資料

・"Encyclopedia of Paleoherpetology. Pelycosauria" ROBERT R.REISZ


(イラスト・文 ふらぎ
(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2011年8月4日木曜日

ラプトレックス  Raptorex kriegsteini



Raptorex kriegsteini
ラプトレックス クリエグステイニ

白亜紀前期(?)
中国
全長 2.6m


白亜紀前期のティラノサウルス科の恐竜。これまで、白亜紀後期のティラノサウルス科の恐竜の小さな前肢は、大型化した頭部とのバランスを取るため小型化した、という説がありましたが、このラプトレックスが時代がより古く、また頭も小さく、体も小さいにも関わらず前肢がすでに小さいため、ティラノサウルス科の小さな前肢は、頭部の大型化とは関係が無い、という事の根拠になりそうだったのですが、、、、

その後、このラプトレックスが白亜紀後期のモンゴルから発見される大型ティラノサウルス科のタルボサウルスの子供ではないか、と言う説も出されています。これは、そもそもこのラプトレックスの化石は化石収集家が私的に購入したもので、発掘された場所が確定されていない、という事が原因でもあります。化石は、化石そのものだけでなく、発見された場所やその地層のデータ、発見された状態等にも非常に重要な情報があります。学術的な発掘の場合は当然、すべての記録をしっかり取るのですが、そうでない場合は、そのデータも無い事が多く、それが故に化石自体は良い物であっても、研究するには支障が出てくる場合もあるのです。

今回のイラストは、2011年の東京・国立科学博物館で開催の恐竜博2011で展示の全身骨格を基に描いています。ラプトレックスの復元に関しては、オフィシャルなイラストと模型が発表されています。特に頭部の復元模型は個人的にも非常に納得の行く物で、いまさら私がイラストを描く必要も無いのですが、全身骨格が魅力的だったので、描いてみたくなったのです。ただ、オフィシャルのイラスト・模型と全く同じでもつまらないので、羽毛の生え方・量は違うものにしました。オフィシャルのものより全体的に羽毛が多いのですが、小さい恐竜といっても、現生の鳥類に比べれば大きく、ダチョウくらいのボリュームはあるので、ここまで全身が羽毛だったかは、自信が無いところです。














ラプトレックス頭部復元模型
(恐竜博2011にて撮影)

前肢は、今や定番の復元となっている、手のひらが内側を向く小さく前へ倣えスタイル。

















手のひらが後ろを向く哺乳類のような、いわゆる「恨めしやスタイル」の復元は、ここ数年では随分少なくなりました。


主な参考資料

・「恐竜博2011」カタログ

・Reanalysis of “Raptorex kriegsteini”: A Juvenile Tyrannosaurid Dinosaur from Mongolia
Fowler DW, Woodward HN, Freedman EA, Larson PL, Horner JR (2011)

(イラスト・文 ふらぎ
(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2011年7月21日木曜日

ティロサウルス Tylosaurus proriger


 
Tylosaurus proriger
ティロサウルス プロリゲル


北米
全長約11m(最大15m?)

白亜紀後期


白亜紀後期の海に繁栄した爬虫類・モササウルス類の中でも
最大級の種類の一つです。

今回のイラストは、2010年発表の"Convergent Evolution in Aquatic Tetrapods: Insights from an Exceptional Fossil Mosasaur"Johan Lindgren, を 基に、尻尾に三日月型のヒレのある復元で描いています。2010年の発表にある通り、三日月型の尾ヒレ説の基となる尻尾の曲がりが確認されているのはプラテカルプスですが、モササウルス類の中でも比較的原始的な部類のプラテカルプスにこの尾ビレがあるのであれば、進化型のティロサウルスにも尾ビレがあるだろうと仮定しています。

モササウルス類は、トカゲやヘビと同じ有鱗目に含まれるとされています。


 










 頭骨にも有鱗目としての特徴が表れています。また、上顎の口蓋内側にも口蓋歯といわれる歯が並び、左右に開く下顎と共に、獲物を飲み込むのに役に立っていたようです。



 















 (プラテカルプス頭骨 2010年きしわだ自然資料館特別展にて撮影
ティロサウルスではありませんが、特徴の分り易い画像と言う事で)

今回のイラストは、オズボーンによる有名な全身骨格図をベースに、尻尾の形状等を調整して描きました。手足のヒレに指の骨をトレースするような凹凸がある復元もありますが、各指の太さや、水中での活動の上での水流の影響を考慮すると、そのような凹凸が無い、という考えに従っています。
また、モササウルス類というとどれも同じようなプロポーションで描かれがちですが、頭部はもちろん、胴と尻尾の比率や手足のヒレにも違いがあり、それぞれに個性があります。ティロサウルスは、手足のヒレはモササウルス類の中では細長いオール状で、尻尾が長いタイプになります。

 
















 ティロサウルス全身骨格 国立科学博物館にて2008年撮影

 ティロサウルス(右)他、モササウルス類展示
(2015年・ペロー自然科学博物館にて撮影)

主な参考資料

・"Convergent Evolution in Aquatic Tetrapods: Insights from an Exceptional Fossil Mosasaur"
Johan Lindgren, Michael W. Caldwell, Takuya Konishi, Luis M. Chiappe 

・"Systematic and Morphology of American Mosasaurs"
Dale A. Russel

・"OCEANS OF KANSAS"
Michel J.Everhart

きしわだ自然資料館特別展「モササウルス」パンフレット
(小田隆氏による、最新に復元に基づき、かつ各モササウルス類のポロポーションが描き分けられた復元画が掲載されています)

(イラスト・文 ふらぎ

(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2011年7月14日木曜日

プラコドゥス ギガス Placodus gigas



 













Placodus gigas
プラコドゥス ギガス

ヨーロッパ
全長 約2m

三畳紀中期

  :
 前回のmeribenniさんのクバノコエルスの記事で、クバノコエルスの種名がギガスなのを知り、そう言えばコイツもギガス種がいたな、と描いてみました。
プラコドゥスは板歯類(板歯目)と言われる三畳紀に繁栄した爬虫類の一種です。板歯類は、このプラコドゥスのようにウミイグアナのような姿のものもいれば、ヘノドゥスやプラコケリスのようなカメのような装甲を背負ったものもいて、なかなかユニークな一群です。また、板歯類という呼称にもあるように、非常な特殊な歯を持っている事でも
知られています。


















板歯類・プセフォ
デルマ(作品詳細



今回、このイラストを描くにあたって、骨格の画像を見ていて初め
て知ったのですが、下顎に大きな突起があります。














(ゼンケンベルグ博物館にて2011年撮影)

このような大きな突起をもつ爬虫類は多くは無いはずで、他といえばトリケラトプスのような角竜や、イグアノドンやハドロサウルスの仲間でしょうか? この突起があるという事は、口が顎関節、つまり頭の後ろのほうまで大きく裂けた一般的な爬虫類とは違う、爬虫類としては異質な顔つきをしていたかも知れません。







上顎を裏側(口蓋側)から見た図。
閉口時にはグレーの部分に突起が入るのかな? 黒色の部分が歯。化石で見ると黒くて平たい、碁石を思わせる形状です。
























(ゼンケンベルグ自
然史博物館にて2011年撮影)
今回のイラストは、このドイツ・ゼンケンブルグ自然史博物館で撮影した骨格を基に、チュービンゲン大学やレーヴェントール博物館の復元骨格を参考に描きました。前に突き出した前歯から「出っ歯」状態に表現される事が多いですが、歯そのものはそれほど大きくはなく、そこに歯ぐきや唇が被ればそれほど目立たないと考え、歯の前突による露出は控えめ表現にしています。














(チュービンゲン大学にて2011年撮影)


主な参考資料
・"THE BRAINCASE OF PLACODUS AGASSIZ, 1833"
Stefania Nosotti & Olivier Rieppel

・"Handbuch der Palaoherpetologie Sauropterygia 1"
O. Rieppel


(イラスト・文 ふらぎ) 
(恐竜・古生物イラストブログ「Extinct Creatures」)

2011年7月7日木曜日

クバノコエルス Kubanochoerus gigas


Kubanochoerus gigas
クバノコエルス ギガス
場所 ユーラシア 
時代 中新世
 :
 クバノコエルスは絶滅した大型のイノシシで、gigas種はクバノコエルス属最大の種です。
前頭部の中央にある一本の角は、オスにだけあるとする説もあり(角の無い頭骨も発見されています)、オス同士の闘争に使ったともされます。
アフリカ中部に生息する現生のモリイノシシHylochoerus meinertzhageni のオスは、頭部に幾つかのコブ状の隆起があり、オス同士で額を打ちつけ合う闘争スタイルをもっていますが、クバノコエルスのオスの闘争も幾分似たようなものだったかもしれません。

 クバノコエルスは以前から描いてみたいなあと思っていたものの、頭骨の写真以外に資料が無くて描けなかったのですが、ふらぎさんの家で何気なく読んでいた本に復元全身骨格の写真が載っていたので、それをもとにしました。

 全身の絵では顔が分かり難かったので、頭の絵を追加しました。
眼窩の上にも一対の角もしくはコブがあります。
参考にした中国で発見された頭骨は、額の角が若干鼻先に向かってゆるく曲がっているので、そのままの形で角を描きました。
しかし、グルジアで発見された頭骨(同じgigas種)をもとに描かれたMauricio Anton氏のイラストでは、角はまっすぐになっています。
個体差なのか、曲がっている方は土圧で歪んでいるのか、調べ切れなかったので気になるところです。

主な参考資料
・「中國古生物」(出版社不明)
(Alan Turner & Mauricio Anton / 訳;冨田 幸光 / 丸善株式会社)
(Jordi Agusti & Mauricio Anton / Columbia Univ Pr)
"East African Mammals : An Atlas of Evolution in Africa, Part B : Large Mammals"
(Jonathan Kingdon / Univ of Chicago Press)

(イラスト、文 meribenni)