2015年3月25日水曜日

プラティベロドン Platybelodon

プラティベロドン・グランゲリ
  Platybelodon grangeri
大きさ:肩高 約2m
発見地:アフリカ、ヨーロッパ、アジア、北アメリカ
時代:新第三紀中新世中期(15001400万年前)

「平らな歯」を意味するプラティベロドンは、その名の通りシャベルのように平たく大きな下あごと歯をもつ奇妙な姿をしていました。上あごは下あごのように平らではなく、ゾウに似た鼻が付いていた可能性があります。今回のイラストもその説に合わせ、幅の狭い細い鼻として描いています。プラティベロドンでは性的二形性が確認されており、オスはより発達した鼻を持っていたようです。また様々な成長段階の化石も見つかっており、未成熟個体はメスに近い姿をしていたようです。
プラティベロドンの化石が見つかる場所は河成層を含んでおり、このことから彼らは川辺や湿地帯に生息していた可能性があります。シャベル状の下あごは湿地帯の土を掘り返すのに使われていたというがある一方で、下あごの歯の先の摩耗状態から、この歯で刈り取った植物を鼻で口に運んで食べていた、という説もあります。

  (イラスト・ヤマモト生物模型、文・Kris S.


主な参考資料

・Osborn, H.F. and Granger, W. 1931. The shoveltuskers, Amebelodontinae, of central Asia. American Museum Novitates 470: 112

・Osborn, H.F. and Granger, W. 1932. Platybelodon grangeri, three growth stages, and a new serridentine from Mongolia. American Museum Novitates 537: 113.
Wang, S., He, S., and Chen, S. 2011. The Gomphotheriid Mammal Platybelodon from the Middle Miocene of Linxia Basin, Gansu, China. Acta Palaeontologica Polonica 58 (2): 221-240.

・Lambert, W.D. 1992. The feeding habits of the shoveltusked gomphotheres: evidence from tusk wear patterns. Paleobiology 18: 132147.

2015年3月17日火曜日

メソダーモケリス Mesodermochelys


メソダーモケリス ウンドゥラトゥス
Mesodermochelys undulatus
全長:約1.5m
 発見地:日本(北海道、兵庫県、香川県) 
時代:白亜紀後期


メソダーモケリスは、オサガメ科に属する絶滅したウミガメの仲間です。現生種や新生代のオサガメは甲羅の骨が大きく退化していますが、原始的なオサガメであるメソダーモケリスではこの退化があまりありません。しかし、メソダーモケリスの甲羅の骨には、「鱗板」(甲羅の骨を覆う角質の板)の存在を示す溝がほとんどありません。鱗板はこの段階でほとんど退化してしまっていたようです。甲羅の中央に鱗板の名残が残っています。
メソダーモケリスは顎を動かす筋肉がよく発達していたために噛む力が強く、また口の中には上下に向き合うように配置する隆起があったために、食物を細かく砕くことができたようです。このため、メソダーモケリスは海中の様々な生物を食べることができたようです。これは、現生のオサガメがクラゲを常食する極端な偏食家であることと対照的です。
白亜紀後期のオサガメ科のカメは、日本以外からはほとんど見つかっていません。メソダーモケリスの化石もいずれも日本から発見されています。 
今回のイラストは、穂別博物館の全長約1.5mの復元骨格を基に描いていますが、他の標本から推測すると、全長2m以上にもなったようです。
 (イラスト・ふらぎ、文・Kris S.





メソダーモケリス復元骨格 穂別博物館にて撮影


 :
主な参考資料

兵庫県洲本市の和泉層群(後期白亜紀)から産出したウミガメ類化石について(2014.1.26)
http://www.hitohaku.jp/research/h-research/kaseki-20140126news.html

淡路島で発見された化石はウミガメ祖先の頭骨 平山廉教授(国際学術院)らの調査で判明(2014. 1. 30)
http://www.waseda.jp/top/news/6549

平山廉, 2012, 北海道上部白亜系から見つかったMesodermochelys(カメ目:ウミガメ上科:オサガメ科)の新資料について. むかわ町立穂別博物館研究報告, 27, 17-22.

中島保寿・櫻井和彦・平山廉, 2011, むかわ町立穂別博物館の所蔵するカメ化石. むかわ町立穂別博物館研究報告, 26, 1-34.

平山 廉・藤井 明・高橋啓, 2006, 香川県高松市塩江町の上部白亜系和泉層群より産出したオサガメ科化石. 化石, 80, 17-20.

平山 廉 「カメのきた道 甲羅に秘められた2億年の生命進化」 NHK出版

2015年1月16日金曜日

タラッソクヌス Thalassocnus

   タラッソクヌス・ナタンス
Thalassocnus  natans

全長:約2m
発見地:ペルー
時代:後期中新世(約600万年前)

 :
タラッソクヌスは約800150万年前に生息していたナマケモノの仲間で、水をかくのに適した後肢や水中での姿勢維持に役立つ力強い尾など、水中生活に適した体をしていました。タラッソクヌス属には異なる時代、異なる水棲適応の度合いを示す5種が確認されており、その中のタラッソクヌス・ナタンスは約600万年前のペルーの海成層から発見された種です。
 本種の歯化石には線状の傷が多く見られますが、これは本種が食物とともに多量の砂を噛んでいたことを意味します。この事から、本種は海浜に打ち上げられた植物やごく浅い所にある植物を食べていたと考えられています。今回のイラストもその説に基づき、浅瀬にいる姿で描いています。
同じタラッソクヌス属の仲間でも、本種より後の時代に生きていた種ではこの傷がほとんど見られません。彼らはより海中の深い場所の植物を食べていたために、砂をあまり噛まなくて済んだようです。また、骨も新しい時代の種になるほど肥大化して密度も増し、それはより水中生活に適した体を持っていた事を示すと言われています。
(解説文・Kris S)

 今回は、タラッソクヌス属の中でも、水棲適応は中程度(?)と考えられているナタンス種を描いてみました。他の種のイラストも描いてみたいのですが、全身骨格についてナタンス種しか資料が見つからず、他の種に関してはほぼ頭骨のみでした。今後、他の種の資料が手に入れば、水棲適応の差も考慮してイラストに出来ればと思っています。
(補足文・ふらぎ)
  

主な参考文献 
Muizon, C. de; McDonald, H. G. (1995-05-18). "An aquatic sloth from the Pliocene of Peru". Nature (Nature Publishing Group) 375 (6528): 224–227.

Amson, E.; Muizon, C. de; Laurin, M.; Argot, C.; Buffrénil, V. de (2014). "Gradual adaptation of bone structure to aquatic lifestyle in extinct sloths from Peru". Proceedings of the Royal Society of London, Series B (Royal Society of London) 281 (1782): 1–6.

Muizon, C. de; McDonald, H. G.; Salas, R.; Urbina, M. (June 2004). "The evolution of feeding adaptations of the aquatic sloth Thalassocnus". Journal of Vertebrate Paleontology (Society of Vertebrate Paleontology) 24 (2): 398–410.

(イラスト・ふらぎ、文・Kris S.

2014年11月24日月曜日

ダルウィノプテルス Darwinopterus




ダルウィノプテルス・モデュラリス
 Darwinopterus modularis
翼開長:0.70.9m 
発見地:中国 
時代:ジュラ紀中期


 :
 ダルウィノプテルスの最大の特徴は、まさしく『ミッシング・リンク』を体現したかのような骨格です。頚椎や頭骨にはプテロダクティルス類の特徴が見られますが、長い足の第五指や長い尾などランフォリンクス類の特徴も見られます。このことから、進化の中間形にあたる種類だと考えられています。
 骨格の特徴と、記載年(2010)がちょうど「種の起源」の出版150周年且つ進化論を提唱したチャールズ・R・ダーウィンの生誕200周年であることから、彼の功績を讃えた学名が名付けられました。
 化石の痕跡から、オスの頭の上には軟組織のトサカがあったと考えられています。また、トサカの痕跡がない個体の化石の腹部から卵が発見されたため、トサカはオスだけの特徴だと判明しました(1)。同時に、翼竜が現在のヘビやトカゲのような柔らかい卵を産むことも分かりました。
 模式種のモデュラリス(D. modularis) 以外にも、頭の長さがやや短いリングロングテエンシス(D. linglongtaensis)と、太い歯を持つロブストデンス(D. robustodens)の、2種類の同属別種がいます。それぞれ頭骨や歯の形状が異なることから、種ごとに食性も違ったと考えられています。奇しくも、ダーウィンが研究したガラパゴス諸島のフィンチ達を彷彿とさせる特徴です。

(1)ただし、体が小さくても卵を産むことができるケースが時々動物に見られるため、未成熟なメスだったという意見もあります。
 (イラスト・ふらぎ、解説文・ラクティア)

 :
・主な参考文献
翼竜の謎恐竜が見あげた「竜」図録 福井県立恐竜博物館 P.44-49
(模式種記載論文)

LU, Junchang. "A new boreopterid pterodactyloid pterosaur from the Early Cretaceous Yixian Formation of Liaoning Province, northeastern China." ActaGeologicaSinicaEnglish Edition 84.2 (2010): 241-246.
(リングロングテエンシス記載論文)

Wang, Xiaolin, et al. "New long-tailed pterosaurs (Wukongopteridae) from western Liaoning, China." Anais da Academia Brasileira de Ciências 82.4 (2010): 1045-1062.
(ロブストデンス記載論文)

LÜ, Junchang, et al. "A new darwinopterid pterosaur from the Middle Jurassic of western Liaoning, northeastern China and its ecological implications." Acta Geologica SinicaEnglish Edition 85.3 (2011): 507-514.
(未成熟メスとする説

Hecht, J. (2011). "Did pterosaurs fly out of their eggs?" New Scientist online edition, 20 Jan 2011. (http://www.newscientist.com/article/dn20011-did-pterosaurs-fly-out-of-their-eggs.html)

2014年10月24日金曜日

ケツアルコアトルス Quetzalcoatlus

ケツァルコアトルス・ノルトロピ
Quetzalcoatlus northropi
翼開長:推定10~11m
 発見地:アメリカ(テキサス州)
時代:白亜紀後期
以前は翼開長15mもある、最大の翼竜といわれていましたが、このノルトロピ種に関しては翼の一部しか見つかっていません。その後発見された近縁種や頭骨や体の骨が見つかった同属の小型個体(翼開長5.5m)から推算すると、翼開長は約10m程度だったようです。また、本種よりもハツェゴプテリクスのほうが大きかった(12m)可能性が示唆されています(※ハツェゴプテリクスを同種とする説もあります)
近縁種の骨格から推定すると、非常に長い首と大きな頭を持ち、直立したときの頭の高さはキリン並み(5)だったようです。ただし、首はあまり曲がらなかったようです。
体重については70kgと推定する意見もありましたが、現在は150500kgはあったとする意見が主流となってきています。
 本当に飛べたかどうかも議論があり、現生鳥類の行動学的データを基にした研究によると、巨大すぎて飛べなかったとする説も提唱されていますが、一方でかなりの長距離を飛行移動出来た、という説もあります。
 食性についても、まったくわかっていません。魚食性とする説や、大きな体で陸上を歩き小さな動物や恐竜を捕まえて食べていたとする説などが挙げられています。
(イラスト・ふらぎ、解説文・ラクティア)

   復元骨格・テキサス大学記念博物館にて2007年撮影  

  ケツアルコアトルス(種未定)復元骨格
2012年・福井県立恐竜博物館・・特別展にて撮影
 


主な参考資料
・翼竜の謎恐竜が見あげた「竜」図録 福井県立恐竜博物館 P.99-101

・佐藤克文 巨大翼竜は飛べたのか スケールと行動の動物学 平凡社新書
 (飛行できなかったとする説)
 
・Sato, K., Sakamoto, K. Q., Watanuki, Y., Takahashi, A., Katsumata, N., Bost, C. A., & Weimerskirch, H. (2009).  Scaling of soaring seabirds and implications for flight abilities of giant pterosaurs. PloS one, 4(4), e5400.
 (首の骨や食性について)

・Witton, Mark P., and Darren Naish. "A reappraisal of azhdarchid pterosaur functional morphology and paleoecology." PLoS One 3.5 (2008): e2271.

2014年10月13日月曜日

オオツノジカ Megaloceros giganteus



オオツノジカ 
 Megaloceros giganteus
メガロケロス・ギガンテウス
(オオツノジカは和名。学名はMegaloceros giganteus

肩高:2.1m
発見地:ヨーロッパ~北アジア、アフリカ
時代:更新世後期
 

  最終氷期を生きた史上最大のシカ、それがオオツノジカです。その名の通り非常に大きな角をもち、その大きさは横幅3.5m、重さ40kgにもなりました。この大きな角は異性に対するアピールや、同性に対する威圧・闘争に使用されていたようです。
オオツノジカが生息していた時代には新人も生きており、17300年前に描かれたとされるフランス・ラスコーの壁画にはオオツノジカと思われる姿があります。
形態および骨・歯から抽出したDNAを用いた系統解析を行い、オオツノジカがヨーロッパに現在生息するダマジカに近縁である、とした研究結果があります。
オオツノジカは約40万年前に地球上に現れ、約8000年前に姿を消しました。シベリアからは7700年前のものとされる化石が見つかっています。絶滅の原因としては、人類による狩猟や環境の変化など、様々な説があります。
因みに日本にもヤベオオツノジカという大型のシカが生息していました。しかし、こちらはオオツノジカとは別属(Sinomegaceros)です。   
 (イラスト・ふらぎ、文・Kris S.

*今回は、オオツノジカの解説文は、大学で古生物学を専攻する Kris S.さんにお願いしました(ふらぎ)

全身復元骨格・2009年・ブリストル市立博物館にて撮影

主な参考資料
Lister, A.M., Edwards, C.J., Nock, D.A., Bunce, M., van Pijlen, I.A., Bradley, D.G., Thomas, M.G. & Barnes, I. (2005): The phylogenetic position of the 'giant deer' Megaloceros giganteus. Nature 438, 850-853.

2014年9月20日土曜日

アンズー Anzu wyliei



Anzu wyliei
アンズー・ウィリエイ
全長:約3.5m 
発見地:北米
時代:白亜紀後期(6600万年前)

ニワトリのようなトサカを持つ恐竜・オヴィラプトルに近い種類で、このグループの中では比較的大型です。近年、オヴィラプトルの仲間には羽毛が生えていることが判明し、アンズーの体や腕にも羽毛が生えていたと考えられています。
学名には、メソポタミア神話に登場する怪物、「アンズー」の名前が付けられました。その腕はワシの翼のようにたくましく、頭にはライオンのタテガミのように立派なトサカがあり、まさしく「アンズー」の名にふさわしい姿でした。
 化石は泥岩層から発見されたため、海岸平野の湿地に生息していたと考えられています。また、歯のない大きなクチバシを持っていることから、植物や小動物や卵など、なんでも食べる雑食だったようです。 

(イラスト・ふらぎ、解説文・ラクティア)


主な参考文献
Lamanna, Matthew C., et al. "A New Large-Bodied OviraptorosaurianTheropod Dinosaur from the Latest Cretaceous of Western North America." PloS one 9.3 (2014): e92022.